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Bible in 90 Days

An intensive Bible reading plan that walks through the entire Bible in 90 days.
Duration: 88 days
Japanese Living Bible (JLB)
Version
ネヘミヤ 記 13:15 - ヨブ 記 7:21

15 ある日、私は畑で、安息日だというのに、ぶどうを絞ったり、麦束を運んだりしている者や、ぶどう酒、ぶどう、いちじくなどの産物をろばに積んで、エルサレムに運び込もうとしている者たちを見つけました。私は彼らを、公衆の面前でしかりつけました。 16 ツロから来た商人も、魚などの商品を持って来て、安息日にエルサレムで売っていました。 17 私は、ユダの指導者たちに尋ねました。「よくも安息日を汚してくれたものだ。 18 元はといえば、私たちの先祖がこんなことをしたから、私たちもこの都も、災難をこうむったのではなかったか。こんなことを続けていたら、もっと大きな御怒りを招くことになる。」

19 それ以来、私は金曜日の日没に都の門を閉め、安息日が終わるまで開かないようにと命じました。そして、従者に門を監視させ、安息日に商品が持ち込まれないようにしたのです。 20 商人や業者が、エルサレムの外にテントを張ったことが一、二回ありましたが、 21 私は彼らをしかって言いました。「いったい、どういうつもりなのか。城壁の回りでうろうろしてはならない。二度とこんなまねをしたら、即刻逮捕する。」それ以後、彼らは安息日に姿を見せなくなりました。 22 それから、レビ人に命じて、身をきよめさせ、安息日をきよく保つために門を守らせました。神様、このような、あなたをお喜ばせする行いを心にお留めください。大いなる愛で私を包んでください。

23 このころ、ユダヤ人の中には、アシュドデ人やアモン人やモアブ人の女と結婚している者があり、 24 ユダヤのことばが全くわからない子どもが大ぜいいることに気づきました。 25 そこで、その親たちを非難してのろい、数人をなぐり倒し、髪の毛を引き抜きました。こうして、子どもを外国人とは絶対に結婚させないと、神に誓わせたのです。 26 「そもそも、ソロモン王はこの問題でつまずいたのではないか。彼の右に出るような王はいなかった。神から愛され、イスラエルの王として立てられたあのソロモンが、外国の女にそそのかされ、偶像礼拝に陥ったではなかったか。 27 おまえたちのしたことは、それほど罪深いことなのだ。見過ごしになどできるだろうか。」

28 また、大祭司エルヤシブを父に持つエホヤダの子の一人が、ホロン人サヌバラテの娘を嫁にしていることがわかったので、彼を神殿から追放しました。 29 神様、どうかこの者たちを忘れないでください。祭司職を汚し、祭司やレビ人の契約と誓約を破ったからです。

30 私は外国人を追放し、祭司とレビ人に務めを割り当て、各自の仕事を徹底させました。 31 彼らは、定められたとおり祭壇にたきぎを運び、いけにえや初物のささげ物の管理に当たりました。神様、どうか私をあわれみ、心にお留めください。

王妃ワシュティの追放

1-3 アハシュエロスは、インドからエチオピヤにまで及ぶ広大なメド・ペルシヤ帝国の皇帝でしたが、その治世の第三年に、シュシャンの王宮で盛大な祝宴を催しました。皇帝は各地から、総督、随員、将校たちをみな招待しました。 お祭り騒ぎは六か月も続き、帝国の富と栄光を誇示する、またとない機会となりました。

この期間が終わると、王は門番から高官に至るまで王宮に仕える者を招いて、庭園で七日間、酒宴を催しました。 大理石の柱の銀の輪には、飾り用の緑、白、青の布が紫のリボンで結びつけられ、黒、赤、白、黄色の大理石がはめ込まれたモザイク模様の歩道には、金銀の長いすが並べてありました。 飲み物は、多種多様な金の杯に、なみなみとつがれています。すっかり気が大きくなった王は、王室とっておきのワインなども惜しげもなくふるまいました。 酒を飲むのは全く自由で、むりやり勧められることも、あえて遠慮させられることもありません。王が役人たちに、皆の好きなようにさせよと言っておいたからです。 同じころ、王妃ワシュティも、王宮の婦人たちを集めて宴を開いていました。

10 さて、最後の七日目のことです。かなり酒のまわった王はつい調子に乗り、王に仕えるメフマン、ビゼタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタル、カルカスら七人の役人を呼び、 11 王妃ワシュティに王冠をかぶらせて連れて来るようにと命じました。絶世の美女である彼女の美しさを、人々に見せたかったのです。 12 役人たちがその旨を伝えたところ、王命にもかかわらず、王妃は言うことを聞こうとしませんでした。これを知った王は怒りに燃えました。

13-15 しかしまず、王室つきの法律顧問たちに相談することにしました。王がこのようなことに関して、法律顧問に相談することなしに判断することはなかったからです。彼らはペルシヤの法律と裁判に通じているばかりか、臨機応変に事を処理できる知恵者でもあり、王は信頼しきっていたのです。その法律顧問というのはカルシェナ、シェタル、アデマタ、タルシシュ、メレス、マルセナ、メムカンの七人で、いずれもメド・ペルシヤの高官でした。政府の有力者であるだけでなく、王とも個人的に親しくしていました。

王はさっそく意見を求めました。「今回の件だが、どうしたらよいものか。側近を通じ、手続きを踏んで出した命令を王妃ははねつけたのだ。法律では、どのように罰せよと定めているか。」

16 メムカンが一同を代表して答えました。「陛下。王妃は、陛下ばかりか、役人や全国民にまで悪い手本を残しました。 17 と申しますのも、これをいいことに、国中の女どもは王妃のまねをして、夫に逆らうに違いないからです。 18 今晩にも、国中の役人の妻たちは、夫たちに口答えすることでしょう。そうなれば、陛下、領地内はくまなく軽蔑や怒りであふれます。 19 もしよろしければ、勅令を出し、絶対不変のメディヤとペルシヤの国の法令として、ワシュティ王妃を永久追放にし、代わりにもっとふさわしい王妃を選ぶことをご宣言ください。 20 この勅令が帝国のすみずみまで及べば、身分にかかわりなく、妻に対する夫の尊厳は守られるでしょう。」

21 王も側近たちも、なるほど、そのとおりだと思い、メムカンの意見に従うことにしました。 22 こうして王は各州に通達を出し、それぞれの民族のことばで、男はみな一家を治めるべきことを命じ、また家長としての威厳を保つことを強調したのです。

王妃に選ばれたエステル

憤りがおさまると、アハシュエロス王は、王妃に下した決断を思い出し、今さらながらワシュティに会えないのが寂しくてたまりません。 見かねた王の側近がこう勧めました。「お心が晴れますよう、国中から特に美しい娘を探してまいりましょう。 各州に、このための役人を任命し、宮殿にふさわしい若くて美しい未婚の娘を選ばせるのです。後宮の監督官ヘガイには、化粧品などを取りそろえる役目を与えてください。 そうして、最もお気に召しました娘を、ワシュティ様の代わりに王妃にお迎えになってください。」この提案に、王が有頂天になったことは言うまでもありません。さっそく実行に移しました。

さて、城内に一人のユダヤ人がいました。ベニヤミン部族の出身で、名をモルデカイといい、ヤイルの息子でした。ヤイルの父はシムイ、シムイの父はキシュです。 キシュは、エルサレムがバビロンのネブカデネザル王の手に落ちた時に捕らえられ、ユダのエコヌヤ王をはじめ多くの人々とともに、バビロンへ送られて来たのでした。 このモルデカイは、ハダサ、またの名をエステルという若く美しい娘を育てていました。実際はいとこに当たるのですが、年もずいぶん離れていたことでもあり、両親が亡くなったあと、娘として引き取ったのです。

さて、王の勅令が出ると、エステルもほかの大勢の娘とともに、シュシャンの王宮内の後宮に連れて来られました。 後宮を管理していたヘガイは特別にエステルを気に入り、彼女のためには何でもしてくれるようになりました。特別の食事や化粧用の品々など、何かにつけて便宜をはかってくれます。わざわざ王宮から七人の侍女を呼んで身の回りの世話をさせたり、後宮で一番良い部屋をあてがったり、大そうよくしてくれました。 10 エステルは、自分がユダヤ人であることを誰にも話しませんでした。モルデカイに固く口止めされていたからです。 11 モルデカイは毎日、後宮の庭に来てエステルの安否を尋ね、これからどうなるか、成り行きを見届けようとしていました。

12-14 選ばれた娘たちについては取り決めがありました。まず、王の寝所に召される前に、没薬の油で六か月、ついで特製の香水と香油で六か月、それぞれ美しさにみがきをかける期間が定められていました。その期間が終わり、いざ王のもとへ召される時がくると、精いっぱい美しく装うため、衣装でも宝石でも願いどおりの物が与えられます。こうして夕刻、王の部屋へ行き、翌朝には、王の妻たちの住む別の後宮へ移るのです。そこで女性たちは、シャアシュガズという宦官の管理のもとで一生を送ることになります。そこにいる女性たちは、王に特別に気に入られ、指名されないかぎり、二度と王のそばへ行くことはできませんでした。

15 さて、いよいよエステルが王のもとへ行く番になりました。彼女は、ヘガイに見立ててもらった衣装を身につけました。その姿の美しさは、ほかの娘たちもいっせいに歓声を上げるほどでした。 16 こうしてエステルは、王の治世の第七年の第一の月に召し入れられたのです。 17 王はほかの誰よりもエステルを愛しました。すっかり気をよくした王は、彼女に王冠を与え、ワシュティの代わりに王妃にすると宣言したのです。 18 このことをお祝いするため、王はもう一度、高官から召使に至るまで全員を集め、大宴会を開きました。諸州に対しては、気前よく贈り物を配ったり、免税を認めたりしました。

モルデカイの功績

19 のちに、王がまた美人選びをしようとした時、モルデカイは政府の役人になっていました。 20 エステルはいまだに、ユダヤ人であることを隠し通していました。モルデカイの家にいた時と同じように、彼の言いつけをよく守っていたのです。

21 そんなある日のこと、宮殿警護の当直に当たっていたモルデカイは、たまたま、城門の警備についている後宮の役人ビグタンとテレシュが、王への復讐として暗殺を企んでいることを知ったのです。 22 ぐずぐずしてはいられません。モルデカイは、さっそく王妃エステルに通報しました。エステルはすぐさまこれを王の耳に入れ、これを知らせてきたのがモルデカイであることも忘れずにつけ加えました。 23 取り調べの結果、ゆるがぬ証拠が上がり、二人ははりつけになりました。この件に関しては、アハシュエロス王の年代記にくわしく記されました。

ハマンの企み

その後まもなくして王は、アガグ人ハメダタの子ハマンを総理大臣に抜擢しました。今やハマンは、国王に次ぐ実力者でした。 ハマンに会うと、王の家臣はみな、うやうやしく頭を下げました。そうするようにとの王の命令だったのです。ところがモルデカイだけは、絶対に頭を下げようとしませんでした。

3-4 周囲の者たちは、来る日も来る日も、「どうして王の言いつけに背くのだ」と言いますが、それでも彼は頑として聞こうとしません。そこでついに人々は、モルデカイだけに勝手なまねをさせてはならないと、そのことをハマンに告げたのです。モルデカイは人々に、自分はユダヤ人だから別だと主張していたからです。 5-6 ハマンは怒りに駆られましたが、モルデカイ一人に手を下すだけではなく、この際、帝国中のユダヤ人を根絶やしにしてやろうと考えました。

その計画を決行する日は、くじで決めることにしました。アハシュエロス王の治世の第十二年の第一の月のことです。その結果、決行の日は第十二の月と決まりました。 こうしてハマンは、王に伺いを立てました。「この帝国のどの州にもくまなく入り込んでいる、ある民族をご存じでしょうか」と、彼は切り出しました。「彼らの法律は、どの国のものとも違っておりまして、そのために陛下の命令に従おうともいたしません。これ以上彼らを生かしておいては、陛下のためになりません。 もしよろしければ、彼らを抹殺せよとの勅令を出していただけませんか。必要な費用につきましては、私が銀一万タラントを国庫に納めさせていただきます。」 10 王は同意し、考えの変わらないしるしにと、指輪をはずしてハマンに渡しました。 11 「金の心配はいらない。とにかくおまえの考えどおりにやってよい。」

12 二、三週間後、ハマンは王の書記官を呼び集め、帝国内の総督や役人あてに手紙を書かせました。州ごとに、それぞれの言語や方言で書かれ、一通ごとにアハシュエロス王の署名と、王の指輪の印が押されます。 13 手紙は急使を立てて、全州に送り届けられました。手紙の内容は、ユダヤ人は老若男女を問わず、第十二の月の十三日を期して皆殺しにすべきこと、彼らの財産は手を下した者が取ってよいことなどでした。 14 そのあとに、「この勅令の写しをとり、各州の法令として公示し、全国民に通達すべきこと。各人は、決行当日のため準備をしておくこと」と書き添えてありました。 15 勅令は、まずシュシャンの都で発令されたのち、至急便で各地方へ送られました。都が騒然とし始めたころ、王とハマンは酒をくみ交わし、上機嫌になっていました。

エステルの協力を求めるモルデカイ

事のいきさつを知ったモルデカイは、あまりのことに着物を裂き、荒布をまとい、灰をかぶって嘆き悲しみました。それから、大声で泣きながら町へ出て行ったのです。 彼は城門の外に立ちました。荒布を着たままで城内に入ることは、誰ひとり許されていなかったからです。 どの州でも、ユダヤ人の間に、すさまじい嘆きの声が起こりました。王の勅令を聞いて生きる望みを失い、断食して泣き、大部分の人が荒布をまとって、灰の上に座り込みました。

モルデカイの様子は、侍女や後宮の役人の口を通してエステルの耳にも達しました。彼女は心配で居ても立ってもいられず、着物を送って、荒布を脱ぐようにと伝えましたが、彼は受け取ろうとしません。 そこでエステルは、自分に仕えてくれる役人ハタクを呼び寄せ、モルデカイのもとへ行って、なぜそのようなことをしているのか聞きただしてほしい、と命じたのです。 ハタクは町の広場に出て、城門のそばにいるモルデカイを見つけました。 モルデカイの話から、いっさいの事情がはっきりしました。ハマンが、ユダヤ人を殺すためには銀一万タラントを国庫に納めてもよい、とまで言ったというのです。 モルデカイは、ユダヤ人殺しを命じる勅令の写しを渡し、エステルに見せてほしいと頼みました。そして、エステル自ら王の前に出て、同胞のために命乞いをするようにとことづけたのです。 ハタクはそのとおりエステルに伝えました。 10 エステルは困りました。どうしたらよいのでしょう。そこでもう一度、ハタクをモルデカイのもとへ送って、こう伝えさせました。 11 「この国ではだれでも、呼ばれてもないのに王宮の内庭に入ったりすれば、男でも女でも打ち首です。王がその者に金の笏を伸べてくださればいのちは助かるのですが。もう一か月も、陛下は私を召してくださっていないのです。」

12 ハタクはエステルの苦しい心中を告げました。 13 しかし、モルデカイの答えはきびしいものでした。「ユダヤ人が全員殺されるというのに、王宮にいるからといって、おまえだけが助かるとでも思うのか。 14 もしも、この事態をおまえがそしらぬ顔で見ているなら、神様は別の人を用いてユダヤ人をお救いになるだろう。だが、おまえとおまえの一族は必ず滅びることになるのだ。神様がおまえを王妃となさったのは、もしかすると、この時のためかもしれない。」

15 すると折り返し、エステルからの返事が届きました。 16 「シュシャンにいるユダヤ人を全員集め、私のために断食させてください。三日間、昼も夜も、飲み食いしないでください。私も侍女も断食しますから。そのあと、国禁を犯してでも陛下にお目にかかるつもりです。そのために死ななければならないのでしたら、いさぎよく死にましょう。」

17 モルデカイはエステルの言うとおりにしました。

王への嘆願

三日後、エステルは王妃の衣装をまとい、王宮の内庭に足を踏み入れました。その向こうには謁見の間が続き、王は王座に着いていました。 王がふと見ると、王妃エステルが内庭に立っています。王は、「よく来た」と言わんばかりに、金の笏を差し伸べました。エステルは進み出て、笏の先にさわりました。 「どうした、エステル。何か願い事でもあるのか。申してみよ。たとえ帝国の半分でも、おまえになら与えよう。」 「もし陛下さえよろしければ、今日陛下のために宴を催したいと存じます。どうかハマン様とごいっしょにお越しください。」エステルは、かしこまって答えました。 それを聞いて王は側近を振り返り、「ハマンに、急いで来るよう申せ!」と命じました。こうして王とハマンは、エステルの宴会に招かれることになったのです。

酒がふるまわれる時になって、王はエステルに尋ねました。「さあ、どうしてほしいのか申すがよい。たとえ国の半分でもおまえに与えよう。」 7-8 「お願いでございます、陛下。もし陛下が私を愛し、お心にかけてくださいますなら、どうか明日も、ハマン様を連れてお越しください。明日の夜、何もかも申し上げたいと存じます。」

ハマンの怒り

宴会のあと、ハマンは天にも昇る思いでした。ところが、門のそばまで来ると、またあの無礼なモルデカイがいます。例によって、ハマンを見ても起立しようとしません。怒りがこみ上げてきましたが、 10 ここで腹を立てては元も子もありません。ハマンはそんな気持ちを抑えて家に戻り、友人や妻ゼレシュを呼び集めました。 11 彼らに自慢話をするためでした。ハマンは自分が財産家であること、子宝に恵まれていること、異例の昇進をしたこと、この国で王に次ぐ権力を握っているのは自分であることなどを得々と語り始めました。

12 場が盛り上がってきたところで、ハマンは取っておきの話だとばかりに得意気に語りました。「実は、エステル王妃の宴に招かれたのは、陛下と私の二人だけだった。そればかりか、明日もまた、陛下と二人でご招待を受けているのだ。 13 だが、それにしても……」と、彼は急に口ごもりました。「小憎らしいのは、あのユダヤ人のモルデカイだ。城門の前に座り込んだまま、私を見てもそしらぬ顔をしている。全くあの男のおかげで、せっかくの喜びも吹き飛んでしまった。」

14 すると、ゼレシュや友人たちは、口をそろえて言いました。「だったら、こうすればいいでしょう。うんと高い絞首台を作るのです。五十キュビト(約二十五メートル)もあるのを。明日の朝にも、陛下に願い出て、モルデカイをつるしてやるのです。すっきりした気分で、陛下と宴会においでになれますよ。」なんとうまい考えだろう。ハマンは大いに乗り気になって、すぐさま絞首台を作らせました。

栄誉を受けるモルデカイ

1-2 さてその夜のこと、王はどうしても寝つくことができませんでした。しばらく読書でもしようかと、書庫から王国の記録文書を持って来させました。読み進むうち、ある項目に目が行きました。門の警備に当たっていた役人ビグタンとテレシュが企てた、王の暗殺未遂事件のところです。計画が未然に防げたのはモルデカイの手柄だとありました。

王は、そばにいた者に尋ねました。「このモルデカイに何かほうびを取らせたか。」「何も取らせてはおりません。」 「誰か外庭で勤務についている者はいないか。」王がこう言った時、例の絞首台にモルデカイをつるす許可を得ようと、ハマンが城の外庭にさしかかりました。 家来は答えました。「ハマン様がお見えです。」「ちょうどよい。ここへ呼べ。」

ハマンが来ると、王はさっそく話を切り出しました。「ほうびを取らせたい者がいるのだが、どんな栄誉を与えたらよいものか。」ハマンは心のうちで思いました。「きっと私のことだ。私以外に、陛下が栄誉を与えたいと思う者などいるはずがないではないか。」 7-8 そこで、わくわくしながら意見を述べました。「陛下ご着用の王衣、それにご愛馬と王冠をお取りそろえください。 そして、最も身分の高い貴族の一人にその人の世話をさせてください。つまり陛下の服を着せ、ご愛馬に乗せ、くつわを取らせて通りを引いて行かせるのです。その時、その者に『陛下のお心にかなう人は、このような栄誉を受けるのだ!』と皆に聞こえるように言わせてはいかがでしょう。」 10 「名案だ!」 王は思わずひざを打ちました。「大至急、王衣を持って来させ、私の馬を引いて来て、そのとおりにしてくれ。栄誉を受けるのは宮廷務めのユダヤ人モルデカイだ。今言ったことを、そっくりそのまま実行するのだ。」

11 ハマンはしぶしぶモルデカイに王衣を着せ、王の愛馬に乗せ、くつわを取って通りを引き歩きながら、「王のお心にかなう人は、このような栄誉を受けるのだ!」と叫びました。 12 モルデカイは勤務に戻りましたが、おさまらないのはハマンです。何とも言えないみじめな気持ちで家に逃げ帰りました。 13 妻のゼレシュや取り巻きたちに事の次第を話すと、一同は頭をかかえるばかりでした。「まずいですね。モルデカイがユダヤ人だと陛下に知れた以上、あの男を亡き者にする計画は台無しです。それどころか、いつまでもモルデカイを目の敵にしていたら、かえって命取りになります。」

14 皆があれこれ知恵をしぼり、善後策を講じている最中に、王の使いが来て、エステルの設けた宴へ出向くようモルデカイをせき立てました。

ハマン、処刑される

王とハマンはエステルの宴にやって来ました。 酒がふるまわれるころ、王はもう一度尋ねました。「エステルよ、いったい何が欲しいのだ。願い事を申すがよい。帝国の半分でも、何でもかなえてやろう。」 ついに、王妃エステルの重い口が開きました。「ああ、陛下。もし私を愛し、お心にかけてくださいますなら、何とぞ私と私の同胞のいのちをお助けください。 このままでは、私も同胞の者たちも助かるすべはありません。皆殺しにされる運命なのです。奴隷に売られるだけなら、口をつぐんでもいられました。もちろんその場合でも、陛下は測り知れない損失をこうむられたでしょう。実際、それはお金では償えないほどのものでございます。」

王は唖然として言いました。「何のことを申しておるのか。かわいそうに、いったい、だれがそのようなことをしようとしているのだ。」 「恐れながら陛下、ここにおりますハマンこそ、悪の張本人、私どもの敵でございます。」

ハマンの顔からは、みるみる血の気が引いていきました。 王は怒り、荒々しく立ち上がると、庭に出て行きました。もうだめだ、自分のいのちは風前の灯だと察したハマンは、立って王妃エステルに命乞いを始めました。 ハマンは絶望のあまり、エステルの腰かけていた長いすに崩れかかりました。ちょうどその時、王が庭から引き返して来たのです。「この宮殿の中で、しかも私の目の前で王妃に手を出すつもりか!」 王の怒りが爆発しました。ハマンの顔には、その場で直ちにベール(死刑囚が死刑執行の前にかけられるもの)がかけられました。

その時、王の側近ハルボナが申し出ました。「陛下、ハマンはモルデカイをつるそうと、五十キュビトもある絞首台を自宅の庭に作らせています。暗殺者の手から陛下のいのちを救った、あのモルデカイを処刑しようとしていたのです。」 王はすかさず命じました。「ハマンをそれにつるせっ!」  10 こうしてハマンは処刑されたのです。それでようやく王の憤りもおさまりました。

ユダヤ人を救済する勅令

その日、アハシュエロス王は、ユダヤ人の敵ハマンの財産を、そっくり王妃エステルに与えました。続いて、モルデカイが王の前に召し出されました。モルデカイがいとこであり養父であることを、エステルが明かしたからです。 王はハマンから取り返した指輪をはずしてモルデカイに与え、即座に総理大臣に任命しました。エステルはモルデカイに、ハマンの財産の管理を一任しました。

ハマンのことが片づくと、エステルはもう一度王の前に出て、足もとにひれ伏し、ユダヤ人に対するハマンの企みを無効にしてくださるようにと、涙ながらに訴えました。 この時も、王は金の笏を差し伸べたので、彼女は身を起こし、立ち上がって、 こう願い出ました。「もしこれがお心にかない、私をあわれとおぼし召されますなら、どうぞ勅令を出して、諸州のユダヤ人を殺せというハマンの指令を取り消してください。 同胞がむざむざ殺されるのを、とても黙って見てはおられません。」

王は王妃エステルとモルデカイに答えました。「おまえたちユダヤ人に手を下そうとしたハマンを、私は絞首台につるし、家も没収してエステルに与えたではないか。 ユダヤ人の件については、私の名を用いて思いどおりの通達を出すがよい。王の指輪で印を押すのだ。だれにも有無を言わせないためだ。」

9-10 直ちに王の書記官が召集されました。それは第三の月の二十三日のことでした。彼らはモルデカイが口述するままに、インドからエチオピヤに及ぶ全百二十七州の、ユダヤ人をはじめ役人、総督、領主にあてた文書を作成したのです。この文書は、各民族の言語、方言にも翻訳されました。モルデカイはこの文書を、アハシュエロス王の名を記し、王の指輪で印を押して、王室専用の急使に託しました。彼らはめいめい、らくだ、らば、若いひとこぶらくだなどにまたがって、全国各地に飛んで行ったのです。

11 この通達には、各地のユダヤ人に対し、自らと家族のいのちを守るために武装蜂起すべきこと、また敵には全力を上げて対抗し、その財産を奪ってもかまわないことが記されていました。 12 しかも、全州いっせいに、その決行日は第十二の月の十三日、その一日のうちと定められていたのです。 13 さらに、この勅令の写しをとって各州の法令とすること、勅令は全国民に公示して、ユダヤ人が敵を打ち倒す十分な準備ができるようにすること、と書き添えてありました。 14 王の急使は、特命を受けてふだんよりいっそう速く、駆けに駆けて先を急ぎました。勅令はシュシャンの城内でも発布されました。

ユダヤ人の勝利

15 モルデカイは青と白の王服をまとい、大きな金の冠をかぶり、しなやかなリンネルと紫の外套をひるがえして、王の前から、喜びに沸き立つ群衆であふれる大通りへと、姿を現しました。 16 集まった誇らしげなユダヤ人の間からは、どっと歓声が上がりました。 17 王の勅令が届いたどの町、どの州でも、ユダヤ人の顔は喜びに輝きました。彼らはその日を祝日にして、盛大な祝賀会を開いたのでした。国民の中には、ユダヤ人のふりをする者も大ぜいいました。ユダヤ人の仕返しを恐れたからです。

1-2 いよいよ第十二の月の十三日がきました。王の二つの勅令が発効する日です。この日、ユダヤ人を征服しようと意気込んでいた敵の立場は、全く一変しました。ユダヤ人は自衛のために、全国各地の町々に結集しました。ユダヤ人にあえて手出しする者は一人もいません。全国民がユダヤ人を恐れたからです。 諸州の指導者層である総督、役人、従臣たちはみなモルデカイを恐れていたので、進んでユダヤ人に手を貸しました。 今やモルデカイは、宮中で大きな権力を持つようになり、その名声は諸州に鳴り響き、しかも、ますます勢力を伸ばしていたのです。

ユダヤ人は、決起の日がくるといっせいに行動を起こし、片っぱしから彼らの敵を倒していきました。 シュシャンでは五百人が殺されました。 7-10 ハメダタの子である宿敵ハマンの子十人も殺されました。その名は次のとおりです。パルシャヌダタ、ダルフォン、アスパタ、ポラタ、アダルヤ、アリダタ、パルマシュタ、アリサイ、アリダイ、それにワユザタ。しかし人々は、ハマンの資産には手を出しませんでした。

11 夜も遅く、シュシャンでの死者の数が報告されると、 12 王は王妃エステルを呼び寄せて言いました。「シュシャンだけでも五百人、ユダヤ人に殺された。もちろんハマンの息子十人もだ。ここでさえこんな具合なら、ほかの州ではどうなっていることか! まだ何かしてほしいことがあるか。あれば、かなえやろう。遠慮なく申すがよい。」 13 「もしよろしければ、もう一日、シュシャンにいるユダヤ人に、今日と同じようにさせてください。それから、ハマンの十人の息子を絞首台につるしてください。」 14 王が承知したので、シュシャンでは勅令が下りて、ハマンの子たちはさらし者にされることになりました。 15 シュシャンに住むユダヤ人は翌日も集まり、さらに三百人を殺しましたが、この時も財産には指一本ふれませんでした。

16 一方、全州のユダヤ人も、シュシャンと同様、自衛のために団結して立ち上がり、敵対する七万五千人を剣にかけましたが、やはり相手方の持ち物には手を出しませんでした。 17 このことは第十二の月の十三日、全州いっせいに行われたのです。翌日は特別な休日として祝宴を設け、勝利を祝いました。 18 ただ、シュシャンにいるユダヤ人だけは二日目も敵を殺し、その翌日を休日として、祝い合ったのでした。 19 こんなことから、今もイスラエルの地方の小さな村々では、毎年、この二日目を祝日とし、贈り物を交換し合うのです。

プリムの祭り

20 さてモルデカイは、これらの出来事をすべて記録し、遠い近いには関係なく、全州のユダヤ人に手紙を送りました。 21 モルデカイはこの手紙の中で、第十二の月の末の二日間を祝日と定め、 22 この歴史的な日を記念して断食と贈り物の交換をしようと提唱しました。この日こそ、ユダヤ人が敵の手から救われ、悲しみが喜びに、嘆きが幸福に変えられた日だからです。

23 ユダヤ人はモルデカイの提案どおり、毎年この習慣を守りました。 24-25 ハマンがユダヤ人虐殺の日を、くじを投げて決めたこと、さらに、事の次第が明らかになった時、その陰謀がついえ去り、王命により、ハマンが自ら作った絞首台で処刑されたこと、息子たちもまた、さらし者となったことの記念日としたのです。 26 こんなことから、この祝日は「プリム」と呼ばれるようになりました。くじを投げることを、ペルシヤ語で「プル」と言ったからです。 27 国中のユダヤ人は、帰化した者も含め、毎年この二日間を、子々孫々に至るまで、祝日として守り抜こうと決心しました。 28 こうしてこの行事は諸州に行き渡り、いつまでもこの出来事が、ユダヤ人の脳裏に鮮やかに刻まれることとなったのです。

29-31 一方、王妃エステルは、プリムの祭りの制定についてモルデカイを支持するとの手紙を送りました。そのほかにも、百二十七州のユダヤ人を励ます善意に満ちた手紙を、モルデカイと王妃エステルの連名で出しました。ユダヤ人は進んで、この、国を挙げての断食と祈りの日を記念日とすることに決めました。 32 こうしてエステルの命令で、祭りの日は正式に法令で定められたのです。

モルデカイのその後

10 アハシュエロス王は、本土だけでなく島々からも貢ぎ物を納めさせました。 王のすぐれた業績とモルデカイの偉大さと王から受けた栄誉については、メディヤとペルシヤの王の年代記にくわしく記されています。 ユダヤ人モルデカイは総理大臣となり、アハシュエロス王に次ぐ権威の座につきました。彼はユダヤ人の英雄であるばかりか、全国民から尊敬を受けました。それは、彼が同胞のために最善を尽くす一方、だれをも差別なく引き立てたからです。

プロローグ

ウツの国にヨブという人が住んでいました。ヨブは人格者で、神を敬い、悪から遠ざかって生活していました。 2-3 彼は子だくさんで、息子が七人、娘が三人もいました。それに、羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭がいる上に、大ぜいの召使をかかえていました。名実ともに、その地方きっての資産家だったのです。

毎年、ヨブの息子たちは、お互いの誕生日ごとに、兄弟姉妹を自宅に招いて祝いました。 その誕生パーティーが一通り終わると、ヨブは決まって子どもたちを呼び寄せ、彼らの身をきよめる儀式を行いました。ヨブは朝早く起き、子どもたち一人一人のために、焼き尽くすいけにえをささげるのです。ヨブは口ぐせのように、「息子たちが、もしかしたら罪を犯し、心の中で神に背いたかもしれない」と言っていたからで、彼はいつもそのようにしていました。

ある日、御使いたちが主の前に出た時のことです。その中に、告発者のサタンもいました。 主はサタンに聞きました。「おまえはどこから来たのか。」「地上を歩き回って、いろいろと見てきたところです。」 「わたしのしもべヨブを知っているか。彼は世界で一番の人格者で、神を敬い、一点の非の打ちどころもない人物だ。」 「それは当然です。あなたが特別に心にかけているのだから。 10 あなたはいつも、ヨブとその家庭、持ち物を守り、ヨブのすることは何でも栄えるように目をかけています。これでは、金がうなるほどあっても不思議はありません。あなたを拝むふりをして当然です。 11 一度ヨブの財産を取り上げてみたら、きっとヨブはあなたをのろうでしょう。」 12-13 「では、ヨブの財産のことは、おまえの好きなようにしてよい。ただ、ヨブの体に触れてはならない。」

こうして、サタンは出て行きました。それからしばらくして、ヨブの息子、娘たちが長兄の家で祝宴を張っている時、悲劇の幕が切って落とされました。

14-15 使者がヨブの家に飛んで来て、悲報を伝えたのです。「大変です! 牛が畑を耕し、そばでろばが草を食べているところへ、いきなりシェバ人が襲いかかりました。家畜はさらわれ、労働者たちは皆殺しです。どうにか助かったのは私一人です。」

16 彼の話がまだ終わらないうちに、別の使いが、いっそう悪い知らせを伝えました。「恐ろしいことです。神の火が天から下って、羊と牧童を残らず焼き殺しました。難を免れたのは私だけです。」

17 この男が報告し終えないうちに、もう一人の使者が息せき切って駆け込んで来ました。「だんな様! 三組のカルデヤ人の野盗がらくだを奪い、召使たちを殺しました。私一人が、何とか逃げて来たのです。」

18 彼がなおも話している間に、さらにもう一人が駆けつけました。「お子さんたちが大変です。皆さん、ご長男の家で宴会を開いておいででした。 19 すると突然、砂漠の方から大風が吹きつけて、家を直撃したのです。それで屋根が落ち、その下敷きになって、皆さんお亡くなりに……。私だけが、どうにか命拾いをしました。」

20 この時ヨブは立ち上がり、悲しみのあまり上着を引き裂き、地にひれ伏して、 21 神に言いました。

「生まれてきた時、私は裸でした。
死ぬ時も、何一つ持って行けません。
私の持ち物は全部、主が下さったものです。
ですから、主はそれを取り上げる権利もお持ちです。
いつでも、どんなときでも、
主の御名がたたえられますように。」

22 このような事態になっても、ヨブは罪を犯したり、神を悪しざまに言ったりしませんでした。

このことがあったあと、御使いたちが再び主の前に出た時、サタンも同席していました。 主はサタンに聞きました。「おまえはどこから来たのか。」「地上を歩き回って、いろいろと見てきたところです。」 「そうか。おまえは、わたしのしもべヨブの態度を見たか。ヨブは世界で一番の人格者だ。神を敬い、いっさいの悪から遠ざかっている。おまえは、わたしをそそのかして、理由もないのに彼に危害を加えた。ところが、あの信仰深さはどうだろう。」 4-5 「いのちが助かるためなら、人はどんなことでもするものです。今度は病気にしてみればいい。ヨブはきっと、面と向かってあなたをのろうでしょう。」 「気のすむようにするがいい。ただし、ヨブのいのちだけは取ってはならない。」

こうして主の前から引き下がったサタンは、ヨブを頭のてっぺんから足の裏まで悪性の腫れ物だらけにして攻め立てました。 ヨブは土器のかけらで体中をかきむしり、灰の上に座り込みました。 それを見て、妻がそそのかしました。「こんなひどい仕打ちをされても、まだ神を大切にするのですか。いっそ、神をのろって死んでしまったほうがいいのではないかしら。」 10 「まるで、神を知らない外国の女のような口をきくのだな。神から祝福ばかり頂いて、災いはお断わりなどという都合のいい話があるだろうか。」ヨブは、このようになってもなお、神を冒瀆するようなことは、いっさい口にしませんでした。

11 さて、ヨブの身に災難が降りかかったことを知った友人たちが三人、互いに打ち合わせをして、彼を慰め励まそうと、はるばる訪ねて来ました。この三人は、テマン人エリファズ、シュアハ人ビルダデ、ナアマ人ツォファルです。 12 彼らはヨブを見て、ただ、びっくりするばかりでした。顔形はすっかり変わり、見分けもつかないほどです。彼らはあまりの痛ましさに声を上げて泣き、めいめい上着を裂き、ちりを空中にまき散らし、頭に土をかぶって悲しみました。 13 それから、ヨブとともに七日七夜、地に座っていましたが、だれも黙ったままでした。ヨブの苦しみようがあまりひどいので、話しかけることもできなかったのです。

ヨブのことば

ついにヨブは口を開き、自分の生まれた日をのろいました。
2-3 「ああ、なぜ私は生まれたのか。
こんなことなら、いっそ生まれないほうがよかった。
私が生まれた日など忘れ去られてしまえ。
神にさえ忘れられ、
永遠の暗闇に包まれてしまえばよいのだ。
5-6 そうだ、暗闇がその日を奪い、
黒雲が覆い隠すがよい。
その日が暦から消し去られ、
その日には何もなかったことになればよい。
その日の夜は荒れすさんだ、喜びのない夜となれ。
のろいの名人よ、その日をのろってくれ。
その夜は星も出るな。
その夜がどんなに光を待ちわびても
夜は明けることなく、
朝がくることがないように。
10 それはこの日が、
母が私を身ごもらせないようにできなかったから、
こんな災難に会うため、わざわざ生まれさせたからだ。
11 ああ、なぜ、私は生まれてすぐに死ななかったのか。
12 なぜ、産婆は私を生かしておき、
乳房をふくませて養い育てたのか。
13 生まれてすぐ死んでいたら、
今ごろ安らかに眠っていただろうに。
14-15 栄華を極めた大臣や王たち、
また城の中に財宝を積み上げた領主たちと
いっしょになっていただろうに。
16 呼吸もせず、陽の光を見ることもない
死産の子だったらよかったのだ。
17 死んでしまえば、悪い者ももう人に迷惑をかけず、
疲れきった者も休むことができる。
18 囚人も、残忍な看守から解放されて安らぎを得るのだ。
19 死んでしまえば、金持ちも貧しい人もない。
奴隷でさえ、自由の身となる。
20-21 なぜ、悲惨な境遇にある者に、
光といのちが与えられているのか。
彼らは死にたくても死ねない。
人が食べ物や金品のことで目の色を変えるように、
ひたすら死を求めているのに。
22 思いどおり死ねたら、彼らはどんなに安らかだろう。
23 神の与えるものが無益と失意の人生だけだとしたら、
なぜ、神は人を生まれさせるのだろう。
24 私から出るのはため息ばかりで、
食事ものどを通らない。
うめき声は水のように止めどなくあふれている。
25 恐れていたことがついに起こったのだ。
26 ぬくぬくと遊び暮らしていたわけでもないのに、
災いが容赦なく降りかかったのだ。」

エリファズのことば

テマン人エリファズからヨブへの答え。
「あえて、ひと言いわせてほしい。
もう黙ってはいられない。
3-4 以前あなたは、悩んでいる人に向かって
神を信頼しなさいと口ぐせのように言っていた。
弱っている人、倒れそうになっている人、
立つ気力もなくして地面に座り込む人、
自暴自棄に陥った人を元気づけてきた。
ところが、いざ自分がその身になってみると、
すっかり弱り果て、自暴自棄になっている。
そんなときこそ、神を信頼するべきではないのか。
神は正しい人に目をかけてくださることが、
信じられないというのか。
7-8 考えてもみなさい。
心底から正しくて罪のない人が
罰せられるなどという話を、
一度でも聞いたことがあるか。
罪と争いの種をまく者が悩みを刈り取ることは、
経験の教えるところだ。
そのような者は、神の怒りの息吹によって死ぬ。
10 若いライオンのように吠えたけっていても、
押しつぶされて滅びるのだ。
11 いつかは、年をとって弱り果てたライオンのように
飢え、子どもたちも散り散りになる。
12 耳もとのささやきのように、こっそりと、
ひとつの真理が私に伝えられた。
13 あれは、人が寝静まった夜中だった。
私は幻を見たのだ。
14 急に私は恐ろしくなり、
身の毛のよだつ思いに全身がわなないた。
15 一つの霊が前を通り過ぎたとき、髪の毛は逆立った。
16 といっても、霊の気配を感じただけで、
姿を見たわけではないが。
気味が悪いほど静まりかえった中で、
どこからともなく、こう言う声が聞こえてきた。
17 『人にすぎない者が
神より正しいなどということがあろうか。
創造者よりきよいなどということがあろうか。』
18-19 御使いさえ過ちを犯し、
神に信頼されていないとしたら、
ちりから造られた人間はなおさらのことだ。
人は虫のように、簡単につぶされて死ぬ。
20 朝には生きていても、夕方には冷たい死体となり、
だれからも気に留められないまま永久に葬られる。
21 か細いいのちの火は吹き消され、
なすすべもなく死ぬだけだ。

助けを呼び求めても、だれも答えてくれない。
神々によりすがっても、助けてもらえない。
怒り狂い、のたうち回って息絶えるだけだ。
神に背く者は、しばらくは栄えても、
思いもよらない災いにみまわれる。
彼らの子どもたちは、だれにもかばってもらえず、
簡単にだまされる。
せっかく上げた収穫も人手に渡り、
その富は、ほかの人の渇きをいやす。
罪の種をまいた者には、罰として不幸が襲う。
火種から勢いよく炎が吹き上げるように、
人は罪と不幸に向かってまっしぐらに進むのだ。
だから、あなたに忠告したい。
神に罪を告白しなさい。
神は、目をみはるような奇跡を何度でも行うからだ。
10 神は地に雨を降らせて田畑をうるおし、
11 貧しい者と謙遜な者を富ませ、
苦しむ者を安全な場所へ連れて行く。
12 神は、悪賢い者の計画をくつがえす。
13 彼らは知恵をこらして計画を練り、
そのわなに自分でかかる。
14 彼らは夜だけでなく、日中でも、
目の見えない者のように手探りで歩く。
15 神は、このような横暴な連中から、
身寄りのない者や貧しい者を救う。
16 こうして、貧しい者は希望を見いだし、
悪者の牙はへし折られる。
17 神に誤りを正してもらえる人は、
なんと幸せなことか。
神の懲らしめをないがしろにしてはいけない。
自分で罪を犯し、招いた結果なのだから。
18 神は傷つけても包帯を巻き、治してくださる。
19 何度でも救い出してくださる。
だから、災いがあなたに寄りつく暇もない。
20 あなたはききんの時には死から、
戦いの時には剣から守られる。
21 人の中傷も苦にならず、将来の心配もなくなる。
22 あなたは戦いもききんも心配する必要がなく、
野獣に襲われることもない。
23 どう猛な野獣は、あなたと平和協定を結ぶからだ。
24 家を留守にしても、何の心配もない。
倉庫には、だれも指一本ふれないからだ。
25 あなたの息子たちは、なくてはならぬ人物となり、
子孫は草のように増え広がる。
26 麦は、収穫の時までは
どんなことがあっても刈り取られない。
そのように、あなたも幸せな一生を送り、
長寿を全うする。
27 このことがうそ偽りでないことを
私は経験から知ったのだ。
あなたのためを思えばこそ忠告するのだ。
私の助言を聞いてくれ。」

ヨブのことば

ヨブの返答。
「ああ、この悲しみと苦しさの重さを
量ることができたらよいのに。
まるで海辺の砂を千倍にもしたような重さなのだ。
だから、思わず激しいことばを吐いてしまったのだ。
主は弓矢で私を狙いうちにした。
その毒矢は心臓深く突き刺さった。
神からの恐怖は隊列を組んで私に襲いかかる。
そのたびに、身のすくむような思いがする。
5-7 野ろばが鳴くのは、草がないからだ。
飼い葉のあるうちは、牛もおとなしくしているものだ。
食べ物に塩気がなければ、人は苦情を言う。
生卵の白身ほどまずいものはない。
見るだけで食欲がなくなり、
食べるところを想像するだけで吐き気がする。
8-9 ああ神よ、もうたくさんです。
どうか死なせてください。
死ねば、この痛みから解放されます。
10 私は神のことばを一度だって拒まなかった。
そのことは、この苦しい拷問の中での
せめてもの慰めだ。
11 なぜ、まだ生きる力が残っているのだろう。
息を引き取る瞬間まで、このまま我慢できようか。
12 私は石のように感覚がないというのだろうか。
私の肉体は、真鍮でできているとでもいうのだろうか。
13 もう何の希望もない。
天涯孤独の身となり果ててしまった。
14 気落ちした友には、親切にすべきではないか。
それなのに、あなたは神を少しも恐れず、
私を責め立てるばかりだ。
15-18 あなたが砂漠の川のように
頼りにならないことはよくわかった。
雪や氷があるうちは水があふれるが、
夏の盛りには干上がってしまう。
川を目あてに、隊商はわざわざ脇道をして来るが、
一滴の水もないのであえない最期を遂げる。
19-21 テマとシェバの隊商は、
水を求めてそこに来るが、
望みは無残にも砕かれる。
あなたへの期待も、同じように裏切られた。
あなたは私を見て怖がり、後ずさりした。
救いの手を伸ばしてはくれなかった。
22 いったいなぜなのだ。
これまで私が、一度でも頼み事をしたことがあるか。
何かをくれるように言ったこともない。
23 助けを仰いだこともない。
24 私はただ、道理にかなった返事をしてほしいだけだ。
それが聞けたら、もう何も言うことはない。
だから教えてくれ。
いったい私が、どんな悪いことをしたというのか。
25-26 真実を言われれば、だれでも胸に響くものだ。
ところが、あなたの批判にはまるで根拠がない。
一時の感情にかられ、
絶望的なことばをはいたというだけで、
私を責めるのか。
27 それでは、身寄りのない孤児を傷つけ、
友を売るのと同じではないか。
28 私の目をまともに見てくれ。
私があなたの前でうそをつくような人間に見えるか。
29 勝手に私に罪があると考えるのはやめてくれ。
私は潔白なのだ。
どうか正しい判断をしてほしい。
30 私に善悪の区別ぐらいつけられないとでも言うのか。
もし落度があるなら、
気づかないはずがないではないか。

人は、どうして苦しみもだえなければならないのか。
人の一生は、奴隷の日々のように長く苛酷だ。
一日の終わりが、なんと待ち遠しいことか。
人は賃金を受け取る週末まで汗水流して働く。
同じように私にも、苦しい日々と、
長くて物憂い夜がある。
床につくとき、『今が朝ならいいのに』と思い、
夜が明けるまで、寝返りを打って悶々とする。
私の体にはうじ虫がたかり、
皮膚はかさぶたで黒ずんでいる。
肉はざくろのように口を開け、膿が流れている。
望みもないまま、またたく間に一日一日が過ぎ去る。
私のいのちは、はかない息のようで、
良いものは何一つ残っていない。
私を見ていられるのも長くはない。
もうじき、私の死骸を見るようになるだろう。
雲が散って消えるように
死んだ者は永久に戻らない。
10 家族の前から永久に姿を隠し、
再び顔を見せることもない。
11 頼むから、私の苦しみをわかってほしい。
悩み苦しんでいる私に、気がすむまで語らせてほしい。
12 ああ神よ、
どうして私を放っておいてくださらないのですか。
私は獣でしょうか。
13-14 眠って悲惨な境遇を忘れようとすると、
あなたは悪夢で私を脅します。
15 こんな状態がいつまでも続くくらいなら、
ひと思いに締め殺されたほうがましです。
16 もう生きていたくなんかありません。
お願いです、神よ。
残り少ない日々を、私だけにしておいてください。
17 人とは何者なのでしょう。
神がわざわざ時間をかけて
苦しめるだけの値打ちがあるでしょうか。
18 朝ごとに尋問し、一日中痛めつけなければ
気がすまないのですか。
19 せめてつばを吐く間だけでも
ひとりにしておいてください。
20 人間の見張り役である神よ。
私の罪がご気分を害したのですか。
なぜ私を標的にし、
とても生きてはいられないようにさせるのですか。
21 なぜ私の罪を赦し、除いてくださらないのですか。
私は今にも息絶える身ではありませんか。
神が捜しても、私はどこにもいなくなるのです。」

Japanese Living Bible (JLB)

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