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Bible in 90 Days

An intensive Bible reading plan that walks through the entire Bible in 90 days.
Duration: 88 days
Japanese Living Bible (JLB)
Version
士師記 15:13 - サムエル記Ⅰ 2:29

14 一行がサムソンを捕らえてレヒに着くと、ペリシテ人は歓声を上げました。主の力がサムソンに注がれたのは、その時です。綱は、まるで糸のようにぷっつりと切れ、手首から解けました。 15 すかさずサムソンは、そこに転がっていたろばのあご骨を拾い上げ、あっという間に千人のペリシテ人を打ち殺しました。 16-17 彼はろばのあご骨を投げ捨てると、こう言いました。「ろばのあご骨で山また山。ろばのあご骨で千人のしかばね。」

以来そこは、ラマテ・レヒ〔あご骨の丘〕と呼ばれています。

18 それからひどくのどが渇いたサムソンは、主に祈りました。「あなたはこの私に目覚ましい働きをさせ、今日、イスラエルをお救いくださいました。ところが、私はのどが渇いて死にそうです。こんなことで異教徒の手に落ちてよいでしょうか。」 19 すると主は、そばのくぼ地から、水をわき出させました。水を飲んですっかり元気を取り戻したサムソンは、そこをエン・ハコレ〔祈りの人の泉〕と名づけました。その泉は今もあります。

20 サムソンは、こののち二十年間イスラエルの士師でしたが、なおこの地はペリシテ人の支配下にありました。

サムソンとデリラ

16 ある日、サムソンはペリシテ人の町ガザへ行き、一人の娼婦と夜を過ごしました。 たちまち、「サムソンを見かけた」といううわさが広まり、町の人々は警戒を強化し、彼の帰りぎわを押さえようと、夜通し町の門で待ち伏せました。「明け方になったら、見つけ出して殺してしまおう」と思ったのです。 しかし、真夜中まで女と過ごしたサムソンは、そのあと町の門まで行き、二本の門柱もろとも引き抜くと、高々とかつぎ上げ、ヘブロンの向こう側にある山の頂まで運んで行きました。

そののちサムソンは、ソレクの谷に住むデリラという女を愛するようになりました。 ペリシテ人の五人の領主がじきじきに彼女を訪ね、「サムソンの力の秘密を探ってくれないか。どうしたら、あの男を鎖で縛り上げてやれるか、ぜひとも知りたいのだ」と頼みました。もちろん、ただではありません。「この仕事を引き受けてくれたら、めいめいが銀千百枚を出そう」と約束したのです。

そこでデリラはサムソンに、力の秘密を打ち明けてほしいと頼みました。「ねえサムソン、どうしてそんなに強いの。教えてちょうだい。だれかがあなたを捕まえるなんて、できっこないわよね。」

「そうだな。真新しい七本の弓の弦で縛られでもすれば、私も人並みの力しか出せないだろうな。」

例の領主たちは、さっそく七本の弓弦を持って来ました。デリラは眠っているサムソンを縛り上げ、 隣室には幾人かを潜ませておいて、大声で叫んだのです。「サムソン! ペリシテ人が襲いに来たわ!」するとどうでしょう。サムソンは、弓弦を木綿糸のようにあっという間に断ち切ってしまったのです。こうして彼の力の秘密は、だれにも知られませんでした。

10 するとまた、デリラはサムソンにからみました。「私をからかったのね。うそつき。ねえ、どうしたらあなたを縛り上げることができるのか、教えてちょうだい。」

11 「わかったよ。まだ使ったことのない新しい綱で縛ってみろよ。普通の人と同じぐらいの力しか出せないから。」

12 それでデリラは、サムソンが眠ったころを見はからって新しい綱を取り出し、縛り上げました。前と同じように隣室に幾人かを潜ませ、またも大声で叫んだのです。「サムソン! ペリシテ人が捕まえに来たわ!」ところがサムソンは、まるでくもの巣でも払うように、綱を腕からはずしてしまったのです。

13 「また私をばかにして、とんでもないでたらめを言ったのね。ねえ、お願い。ほんとうのことを教えて。どうしたらあなたを縛り上げることができるのか。」

「ああ、わかったよ。私の髪を、おまえの機に織り込んでみるんだな。」

14 デリラはサムソンが眠ったのを確かめ、言われたとおり、彼の長い髪の毛を機に織り込むと、わざと悲鳴を上げました。「ペリシテ人よ! サムソン!」サムソンは目を覚ますと、髪をぐいと引っぱり、機を壊してしまいました。

15 デリラは泣き出しそうな声で言いました。「よくも愛してるなんて言えるわね。ちっとも私を信用してくれないくせに。もう三度もだまされたわ。それでもまだ、力の秘密を教えてはくれないのね。」

16-17 寝ても覚めても彼女がせがみ続けるので、サムソンは死ぬほどつらくなって、ついに秘密を打ち明けました。「実は、私の頭にはかみそりが一度も当てられたことがないんだ。私は生まれる前から神にささげられたナジル人だから。もし髪がそり落とされたら、私の力もおしまいさ。ほかの人と同じになるんだ。」

18 とうとう彼はほんとうのことを明かしたのです。デリラはさっそく、ペリシテ人の五人の領主を呼びにやりました。「もう一度お越しください。今度こそ間違いありません。」

彼らは約束の金を用意してやって来ました。 19 彼女はひざ枕でサムソンを眠らせると、床屋を呼び、髪をそり落とさせました。念のためサムソンをたたいてみると、確かに彼の力はなくなっているようです。 20 もう大丈夫と、デリラはまた悲鳴を上げました。「ペリシテ人が捕まえに来たわ! サムソン!」サムソンは目を覚まし、「なあに、いつもの調子で片づけよう。体をひと揺すりすれば、思いのままさ」と考えました。主が自分から去ったことに気づいていなかったのです。 21 ペリシテ人はサムソンを捕まえると、目をえぐり出し、ガザへ連れて行きました。そこで青銅の足かせをはめて牢に入れ、臼を引かせました。 22 しかしその間に、サムソンの髪は少しずつ伸びていました。

23-24 ペリシテ人の領主たちは、サムソンを捕らえたことを祝う盛大な祭りを催しました。人々は彼らの神ダゴンにいけにえをささげ、熱狂的に賛美しました。

獄中のサムソンを満足げに眺めながら、「われわれの神は、宿敵サムソンを引き渡してくださった。同胞を大ぜい殺した元凶が、今はあのざまだ」と言いました。 25-26 いいかげん、みなの酔いが回ったころでした。「サムソンを連れ出せ! 見せ物にして楽しもうじゃないか」という声が上がりました。サムソンは牢から引き出され、神殿の中央の大屋根を支える二本の柱の間に立たされました。彼は手を引いている若者に頼みました。「両手を二本の柱にすがらせてくれ。寄りかかって休みたいんだ。」

27 この時、神殿は立錐の余地もないほど、人で埋め尽くされていました。五人の領主も臨席しており、バルコニーにも三千人の男女がひしめいて、サムソンの様子をおもしろ半分に見つめていました。

28 サムソンは主に祈りました。「ああ神、主よ。どうかもう一度、私のことを思い出してください。今一度、力をお与えください。ペリシテ人にえぐられた二つの目の復讐をさせてください。」

29 祈り終わると、全力を振り絞って二本の柱を押しました。 30 最後にサムソンは、「ペリシテ人もろとも死なせてください!」と祈りました。すると神殿は、領主たちをはじめ、居合わせた全員の上にくずれ落ちていったのです。なんと、サムソンがこの時殺した者は、彼が生きている間に殺した者より多くいました。

31 その後、サムソンの兄弟や身内が来て遺体を引き取り、郷里に運んで、ツォルアとエシュタオルとの間にある、父マノアの墓に葬りました。サムソンが士師としてイスラエルを裁いたのは二十年間でした。

ミカの偶像

17 エフライムの山地に、ミカという名の人が住んでいました。 ある日、彼は母親に言いました。「盗まれたとお母さんがしきりにのろって言っていた銀千百枚のことだけど、実はあれは私が盗んだのです。」すると母親は、「よく正直に話してくれたね。主が祝福してくださるように」と答えました。 ミカがその金を母親に返した時、彼女は言いました。「おまえの名誉のためにも、これを主にささげます。これでおまえのために彫像を造り、銀をはってもらいましょう。」 4-5 母親は銀二百枚を銀細工人に渡し、彫像を造らせました。彫像は、屋敷内にあるミカの聖堂に安置されました。ミカはたくさんの偶像を集めており、エポデとテラフィム(占いや霊媒に使う偶像)もそろえて、息子の一人を祭司に任命していたほどでした。 当時イスラエルには王がなく、各人各様、自分の目に正しいと思うことを行っていたのです。

7-8 ある日、ユダのベツレヘム出身の若い祭司が、安住の地を求めてエフライム地方にやって来ましたが、道中、ふとミカの家の前で立ち止まりました。 ミカは、「どちらからお越しですか」と尋ねました。

「ユダのベツレヘムから参った祭司です。どこか住むのによい所はないものかと、旅しております。」

10-11 「よろしければ、ここにとどまってください。私どもの祭司になっていただきたいのです。毎年、銀十枚と新しい衣服ひとそろい、それに生活費いっさいを面倒みて差し上げますよ。」

若者は同意し、ミカの家族同様の扱いを受けました。 12 ミカはおかかえの祭司を得たのです。 13 「私は今、主からほんとうに祝福していただいた。正真正銘の祭司がいるのだから」と、彼は感激して言いました。

ライシュを攻め取るダン族

18 こうした話でもわかるように、そのころイスラエルには王がいませんでした。さて、ダン族は自分たちの相続地を得ようとしていました。まだ割り当て地を攻め取っていなかったからです。 そこで、ツォルアとエシュタオルの町から勇士五人を選び、土地を偵察させました。エフライムの山地に着いた五人は、ミカの家に宿を取りました。 そして、レビ人なまりの若者に気づき、近くに呼んで尋ねたのです。「ここで何をしているのですか。なぜこんな所にいるのです?」

若者はミカとの取り決めについて話し、ミカの私的な祭司であることを告げました。

「そうですか。それなら、われわれの旅が成功するかどうか、ひとつ、神に伺ってくれませんか。」

「安心して旅を続けてください。主は皆さんを、お心にかけていらっしゃいますよ。」

やがて五人は、ライシュの町に入り込みました。そして、住民がみな安穏と暮らしているのに気づきました。生活ぶりもフェニキヤ人らしく、たいそう裕福なものでした。この辺りでは脅威を与える強い部族もなかったので、彼らは無防備同然で、安心しきっていました。そのうえ、シドンにいる同族とも遠く離れ、近隣の村々ともほとんど交渉を断っていたのです。 偵察に来た五人は、ツォルアとエシュタオルへ帰りました。待ちかねていた人々は尋ねました。「どうだったのか、向こうの様子は?」

9-10 「ぜひ攻め取ろう。見た限りでは申し分ない所だ。土地は広々として、よく肥えている。それに、全く無防備だった。さあ、出かけよう。神様があの地を与えてくださるのだ。」

11 そこで、ダン族の兵六百人が、ツォルアとエシュタオルから送り込まれました。 12 第一夜は、ユダのキルヤテ・エアリムの西側で過ごしました。そこは今も、マハネ・ダン〔ダンの陣営〕と呼ばれています。 13 そこからエフライムの山地へと、進軍を続けたのです。

ミカの家に差しかかった時、 14 先の偵察隊の五人が言いました。「この家にはエポデやテラフィム、それに彫像をたくさん安置した聖堂がある。となると、われわれのなすべきことはわかっているな。」

15-16 五人は残りの兵を門外に立たせたまま、邸内に入りました。まず、あの若い祭司にあいさつすると、 17 五人は聖堂に踏み込み、彫像やエポデやテラフィムを持ち出そうとしました。

18 「何をするんだ」と、若い祭司はさえぎりました。

19 「どうか、おとなしく私どもとともにおいでくださり、われわれの祭司におなりなさい。あなただって、一軒の家でたった一人に仕えるより、部族全体の祭司になるほうがいいのではありませんか。」

20 すると祭司は誘いに応じ、エポデやテラフィム、彫像を取って彼らの一員に加わりました。

21 一行はそこを引き揚げ、子ども、家畜、家財などを隊列の先頭に立てて先を進みました。 22 ミカの家からかなり離れたところで、ミカと近所の人々が追いかけて来て、 23 大声で言いました。「待ちなさい!」

「いったいどうしたのですか。ずいぶんものものしいですが。」

24 ミカは答えました。「『どうしたのだ』とは、しらじらしい。私の神々から祭司まで、いっさいがっさい持ち出しておきながら。家が空っぽになっているではないか!」

25 「何ですと? もっと気をつけてものを言ってほしいな。でないと、腹を立てた連中が、あなたがたを皆殺しにしかねませんよ。」

26 こう言い捨てると、ダンの人々は去って行きました。相手が大ぜいすぎて手出しがかなわないと悟ったミカは、すごすごと家へ引き返しました。

27 一方ダンの人々は、ミカの造った彫像と祭司を伴い、ライシュの町に着きました。町は全く無防備だったので、住民を襲って打ち、町を焼き払いました。 28 だれも、住民を助ける者はいません。シドンから遠く離れていたうえ、周囲の町とも同盟を結んでおらず、どことも交渉がなかったからです。町はベテ・レホブに近い谷にあり、ダン族は町を再建し、そこに住みつきました。 29 町の名も「ダン」と改めました。彼らの先祖で、イスラエルの息子の一人ダンの名にちなんだものです。元の名はライシュでした。 30 ダンの人々は自分たちのために彫像を立て、ゲルショムの子で、モーセの孫に当たるヨナタンとその子孫を祭司に任命しました。彼らは、その地の民が捕囚となるまで代々祭司を務めました。 31 こうして、神の宮がシロにあった間中、ダン族はミカの彫像を拝んでいました。

ベミヤニン族による暴行事件

19 イスラエルにまだ王がいなかったころ、あるレビ人がエフライムの山地の奥に住んでいました。その人は、ユダのベツレヘムから一人の娘をそばめとして連れて来ました。 ところが彼女はその人をきらって、ベツレヘムの実家へ逃げ帰り、四か月もそこにいました。 そこで夫は従者を一人伴い、そばめを乗せるろばをもう一頭連れて、彼女を連れ戻そうと会いに出かけたのです。彼女は訪ねて来た夫を招き入れ、父親に引き合わせると、父親も歓待してくれました。 勧められるまま三日間滞在し、うちとけて、楽しい時を過ごしました。

四日目の朝早く、出立しようと腰を上げると、父親は、朝食をすませてからにするよう熱心に勧めます。 そうこうするうち、たいそう楽しかったのか、父親は、もう一晩泊まってくれとしきりに頼むのです。 初めはなかなか承知しませんでしたが、しゅうとがあまりに頼むので断りきれず、泊まることにしました。 翌朝、二人が早く起きると、またも父親が、「夕方までいてください。そして、日暮れ前にお発ちなさい」と、拝み倒さんばかりに頼むのです。二人はこの日も、ごちそう攻めに会いました。

午後になって、夫婦と従者は出立の用意をしました。すると、しゅうとが言いました。「もう日も暮れかかった。今晩だけ泊まってお行きなさい。楽しい最後の晩を過ごそうじゃないか。明日の朝早く発てばいいだろう。」

10 しかし、今度ばかりは耳を貸さず、彼らは出立し、日暮れまでに、エブスとも呼ばれたエルサレムの近くまで来ました。 11 従者が主人に言いました。「日が暮れかかっておりますので、これ以上旅を続けるわけにはいきません。今夜はここに泊まってはいかがでしょう。」

12-13 「いや、だめだ。イスラエル人のいない異教徒の町だから。ギブアか、できればラマまで行こう。」

14 こうして、一行は旅を続けました。ベニヤミン族の村ギブアまで来た時、ちょうど日が沈みました。 15 ここで一泊しようと町へ入って行きましたが、だれも招き入れてくれません。しかたなく町の広場で野宿することにしました。 16 ちょうどそこへ、野良仕事を終えた老人が通りかかりました。そこはベニヤミンの領地でしたが、この老人はエフライムの山地出身で、今はギブアに住んでいる人でした。 17 広場に野宿している旅人に目を留めた老人は、「どちらからお越しかな。どこまで行かれるのじゃ」と尋ねました。

18 「ユダのベツレヘムから戻る途中です。シロからそう遠くないエフライムの山奥に住んでおります。今夜は、どこの家にも泊めてもらえなかったのです。 19 ろばの餌も私たちの食糧やぶどう酒も、たくさん持っています。」

20 「お気づかいは無用ですよ。私の家にお泊まりなさい。こんな所に野宿してはいけない。」

21 老人は一行を自宅に案内しました。ろばにたっぷりまぐさをやったあと、共に食卓を囲みました。 22 夕食の席がしだいにはなやいできた時、ならず者の一団が家を取り囲み、戸をたたき始めたのです。彼らは大声で、「おまえの所に泊まった男を出せ。そいつに興味があるのだ」とどなります。 23 老人は外へ出て、彼らと話し合いました。「そんな悪いことはよしなされ。あの方は私の客人だ。 24 代わりに、私のところの生娘と客人のそばめを差し出そう。いま二人を連れて来るから、好きなようにすればいい。ただし、客人には指一本ふれてくれるな。」

25 それでも彼らは聞き入れません。すると客人のレビ人は、自分のそばめを外のならず者の前に放り出しました。彼らは夜通し代わる代わる彼女を辱め、夜が明けるころようやく解放したのです。 26 彼女は、明るくなるまで戸口に倒れたままでした。

27 旅立とうとして夫が戸を開けると、自分のそばめが手を敷居にかけたまま入口に倒れているのを見ました。 28 「さあ、立ちなさい。出かけよう」と声をかけましたが、何の返事もありません。すでに彼女は死んでいたのです。彼は死体をろばに乗せ、家まで運びました。 29 家に着くと、ナイフで死体を十二に切り分け、一つずつイスラエルの各部族に送りました。 30 それを見た民はみな、ベニヤミン人の野蛮な行為に怒りをかきたてられました。「エジプトを出て以来、こんなひどい出来事があっただろうか。この事件を見過ごすわけにはいかない。」

ベミヤミン族への報復

20 1-2 そこで全イスラエルから、ミツパに指導者たちと四十万の兵が向かい、主の前に一つの心になって集結したのです。ダンからベエル・シェバに至る全国各地はもとより、ヨルダン川の東側のギルアデからも、ぞくぞくと集まって来ました。 イスラエル軍がミツパに集結したという知らせは、まもなくベニヤミン領内に伝わりました。イスラエルの指導者たちは殺された女の夫を呼んで、真相を話すよう求めました。 「私たちは、ベニヤミン領内のギブアに行き、その夜ある家に泊まりました。 ところが夜中に、ギブアの者どもが家を取り囲み、私を殺そうとしたのです。一味は私のそばめに暴行を加え、無残にも殺してしまいました。 私はそばめの死体を十二に切り分け、イスラエルの全地に送りました。それというのも、彼らの仕打ちがあまりにむごかったからです。 さあ、皆さん、どうか協議してください。」

8-10 彼らは口をそろえて言いました。「ギブアの村に報復するまでは、一人たりとも家には帰らない。全軍の十分の一をくじで選び分け、食糧補給に当たらせよう。残りは結集して、こんな恥ずべきまねをしたギブアを滅ぼそう。」 11 イスラエル全国民は、そのために一丸となりました。

12 さっそくベニヤミン族に使者を立て、要求を突きつけました。「おまえたちは、あの忌まわしい事件を知っているのか。 13 あの悪事を働いた者たちを引き渡せ。彼らを処刑して、イスラエルから悪を除き去るのだ。」

しかし、ベニヤミン族は聞こうとはしませんでした。 14-15 それどころか、二万六千の兵をギブアに集め、地元ギブアから募った七百人と合流し、イスラエル軍に対抗する構えを見せたのです。 16 ベニヤミン軍には、左ききの石投げの名手が七百人いました。その腕まえは大したもので、一本の毛をねらっても的をはずさないほどでした。 17 一方、ベニヤミンを除くイスラエル軍は、総勢四十万人に上りました。

18 戦いを前にして、まずイスラエル軍は、ベテルで神に伺いを立てました。「ベニヤミンと一戦交えるのに、どの部族が先陣を切るべきでしょうか。」

すると主は、「ユダが先頭に立ちなさい」と答えました。

19-20 そこで全軍は、翌朝早く、ベニヤミンを攻撃するためにギブアへ向かいました。 21 しかし、ギブアを守っていたベニヤミン軍が不意に襲いかかり、その日のうちに二万二千人のイスラエル兵を倒したのです。 22-24 イスラエル軍は主の前で夕方まで泣き続け、再び伺いを立てました。「私たちは、同胞ベニヤミンとまだ戦うべきでしょうか。」

「戦いなさい」という主の答えが返ってきました。イスラエル軍は奮い立ち、翌日も、同じ場所で戦おうと出陣しました。 25 ところがこの日も、剣の使い手一万八千人を失うはめになったのです。 26 そこで、イスラエル全軍はベテルに上り、主の前に泣き伏して夕方まで断食し、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげました。 27-28 当時、神の契約の箱はベテルにあり、アロンの孫で、エルアザルの子ピネハスが祭司でした。

イスラエルの民は主に尋ねました。「また出陣して、兄弟ベニヤミンと戦うべきでしょうか。それとも、やめるべきでしょうか。」

すると主は、「行きなさい。明日、あなたがたはベニヤミンを打ち破ることができる」と答えました。

29 そこで、イスラエル軍はギブア周辺に伏兵を潜ませ、 30 三日目に攻撃に移り、いつものような陣形をとりました。 31 ベニヤミン軍が迎え撃とうと町から出てくると、退却すると見せかけて町からおびき出したのです。ベニヤミン軍は前回同様、ベテルとギブアを結ぶ路上でイスラエルを撃破し、たちまち三十人を倒しました。 32 ベニヤミン軍は、「また勝ったぞ!」と雄たけびを上げましたが、実はそれがイスラエル軍の作戦だったのです。初めからわざと逃げて、ベニヤミン軍を町からおびき出そうと考えていたのでした。 33 本隊はバアル・タマルまで来た時、一転して反撃に移り、ゲバの西に隠れていた伏兵一万も飛び出しました。 34 伏兵は、まだ危険に気づいていないベニヤミン軍のしんがりを襲いました。 35-39 主が助けを与えたので、イスラエル軍はベニヤミン軍を打ち破ることができたのです。その日、ベニヤミン軍は二万五、一〇〇人を失い、生き残った兵士は数えるほどでした。

実際ベニヤミン軍は、イスラエル軍が彼らの前から退却したことで、前回同様の大勝利を確信しました。しかしその時、伏兵がギブアに突入し、村にいた全員を殺し、火を放ちました。その煙を合図に、イスラエル軍は反撃に転じ、いっせいに攻撃を開始したのです。 40-41 ベニヤミン軍はうしろを振り返り、町が炎に包まれているのを見て恐怖に襲われました。危険が身に迫るのを感じ、 42 彼らは荒野へ逃げようとしましたが、イスラエル軍は追跡し、伏兵の一隊も駆けつけて、背後からベニヤミン軍を打ちました。 43 そして、包囲しながらギブアの東方へと追いつめ、彼らの大半を殺しました。 44 その戦いで、一万八千人のベニヤミン軍兵士が死にました。 45 生き残った兵は荒野へ逃げ、リモンの岩に向かいましたが、その途中で五千人が殺され、さらにギデオム付近で二千人が倒されました。 46-47 こうしてベニヤミン族は、一日で二万五千の勇士を失ったのです。リモンの岩へ逃げ延びたのはたった六百人で、四か月間そこにこもっていました。 48 その後イスラエル軍は引き返し、ベニヤミンに属するものを男も女も子どもも家畜も打ち、町々村々を片っぱしから焼き払いました。

ベミヤミン族絶滅の危機

21 イスラエルの指導者たちはミツパで、自分の娘をベニヤミン族へは嫁がせないという誓いを立てました。 そして、ベテルに集まり、神の前に座して、夕方まで声を上げて泣き悲しんだのです。 彼らはイスラエルの神、主に叫びました。「主よ。なぜこんなことが起こったのでしょう。今われわれは一つの部族を失いました。」

翌朝、民は早く起き出し、祭壇を築き、焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげました。 そして、彼らは言い始めました。「ミツパで主の前に集まった時、イスラエルの部族で欠席した者はいなかっただろうか。」というのは、その時、「出席を拒む者は必ず殺される」というきびしい誓いを立てていたからです。 とにかく全イスラエルにとって、ベニヤミン族を失ったことは、あまりに深い悲しみでした。「ああ、もうベニヤミンはなくなるのだ。なくなってしまうのか。」口を開けば、そのことばかりです。「れっきとしたイスラエルの部族の一つが切り捨てられ、消えていく。 あの生き残った一握りの者に、どうやって妻をめとらせたものだろう。われわれは主に、娘をベニヤミン人に嫁がせないと誓ってしまった。」

8-9 その時、ミツパへの集結を拒んだ者を殺すという誓いに、再び思いが及びました。すると、ヤベシュ・ギルアデからは、だれも出ていなかったことがわかりました。 10-12 そこで精兵一万二千を送って、そこの住民を滅ぼすことにしたのです。すべての男子、既婚の女子、子どもらの血が流されました。ただし、適齢期の若い処女だけは助けました。その数は四百人で、全員シロの陣営へ連れて行きました。

13 それから、リモンの岩にこもるベニヤミンの少数の生存者に、和解の使者を送りました。 14 四百人の処女が妻として与えられ、めいめい家に戻りました。ただ、全員に嫁がせるには、四百人では足りません。 15 この時代は、イスラエルにとって悲しみに満ちた時期でした。主がイスラエルの部族の間を引き裂かれたからです。

16 長老たちは思案にくれました。「あの残りの者に妻をめとらせるには、どうしたらいいだろう。ベニヤミンの女は残らず死んでしまっている。 17 しかし、何としても妻をあてがってやらなければ、イスラエルの一つの部族が永遠に絶えてしまう。 18 かといって、われわれの娘を与えるわけにはいかない。厳粛な誓いを立てた以上、破った者は神からのろわれるからだ。」

19 その時、突然だれかが、毎年シロの畑で催される祭りのことを思いついたのです。シロの町は、レボナとベテルとの間、ベテルからシェケムへ至る道の東側にありました。 20 そこで長老たちは、妻を求めているベニヤミンの男たちにこう指示しました。「さあ、行って、ぶどう畑に隠れていなさい。 21 シロの娘たちが踊りに出て来たら、飛び出して、めいめい娘をさらって連れ帰り、妻にしなさい。 22 娘の父親や兄弟が私たちに抗議してきたら、こう言おう。『どうか、わかってくれ。われわれに免じて、娘さんをベニヤミンの男たちに嫁がせてやってくれ。ヤベシュ・ギルアデを滅ぼしても、彼ら全員に妻をもたせてやれなかった。こうでもしなければ、あなたがたが罪を犯さず、娘さんを彼らに与えることはできないわけだから。』」

23 ベニヤミンの男たちは、言われたとおりにしました。祭りに出て来た娘をさらって領地に連れ帰ったのです。彼らは町を再建して定住しました。 24 こうしてイスラエルの民は、それぞれの相続地へと戻りました。

25 当時のイスラエルには王がなく、各人が正しいと思うことを思うままに行っていました。

残されたナオミ

1-2 昔、士師といわれる人たち(イスラエルに王国が設立されるまでの軍事的・政治的指導者)が治めていたころのことです。イスラエルを大ききんが襲いました。そのため、ユダのベツレヘム出身のエリメレクは、家族とともにモアブの地に移り住みました。妻の名はナオミといい、二人の間にはマフロンとキルヨンという息子がいました。 ところが、モアブで暮らしている間にエリメレクは死に、ナオミと二人の息子があとに残されました。 4-5 やがて二人の息子は、モアブの娘と結婚しました。マフロンの妻はルツ、キルヨンの妻はオルパといいました。しかし、イスラエルを出てから十年が過ぎたころ、二人の息子も死んでしまいました。ナオミは夫ばかりか息子たちにまで先立たれ、とうとう一人になってしまったのです。

ベツレヘムに帰るナオミとルツ

6-7 そこで、ナオミは二人の嫁を連れてイスラエルに帰ろうと決心しました。それは、故郷のユダは主の恵みによって、ききんが去ったと伝え聞いたからでした。 しかし、帰郷の途についてまもなく、ナオミは考えを変えてルツとオルパに言い聞かせました。「あなたたちは、私について来るより実家へお帰りなさい。息子たちや私によくしてくれてほんとうにありがとう。 いい再婚相手が見つかるようにお祈りしていますよ。」ナオミが別れの口づけをすると、二人はわっと泣きくずれました。 10 「お母様、そんなことおっしゃらないで。お願いですから、お母様といっしょに行かせてください。」

11 しかしナオミは、首を横に振るばかりです。「いいえ、いけません。お里へ帰ったほうが幸せですよ。もう私にはあなたたちの夫になれるような息子がいないのですから〔当時、夫に先立たれた嫁は、亡き夫の弟と結婚する決まりがあった〕。 12 さあ、里へお帰り。私は今さら再婚できる年でもないし、かりに再婚して、今夜にでも身ごもって息子を産んだとしても、 13 その子が大人になるまで待てるわけもないでしょう。私の娘たち、もう私を苦しめないでちょうだい。あなたたちにつらい思いをさせたことで、もう十分主から罰を受けたつもりですよ。」

14 二人の嫁はまた、声を上げて泣きました。そしてオルパは、泣く泣くしゅうとめに別れの口づけをし、自分の郷里へ帰って行きました。しかしルツは、ナオミにすがりついて離れようとしません。

15 「ほら、オルパは里へ帰って行ったわよ。あなたもそうしなさい。」

16 「お願いです、お母さん。私を放り出さないでください。お伴させていただきたいのです。お母さんといっしょに暮らしたいのです。お嫁に来た以上、私もお母さんと同じ民です。お母さんの神様は私の神様です。 17 どうぞ、いつまでもおそばに置いてください。私たちを引き離すものは死だけです。もしおそばを離れでもしたら、主が幾重にも私を罰してくださいますように。」

18 ナオミは、ルツの決心が固く、これ以上説得してもむだだと知ると、もう何も言いませんでした。 19 こうして二人はベツレヘムへ帰り着き、村中がそのことでわき立ちました。女たちは、「まあ、ほんとうにナオミさんかい」と言って騒ぎましたが、 20 ナオミは答えました。「お願いだからナオミなんて呼ばないで。マラって呼んでちょうだい〔ナオミは「心地よい」、マラは「苦い」の意〕。全能の神様に、ずいぶんつらい目を見させられたんですから。 21 満たされてイスラエルを出て行ったのに、すべてをなくして帰って来たのです。主に見捨てられてこんな不幸に陥った私を、どうしてナオミなんて呼ぶのでしょう。」

22 ナオミとルツがモアブからベツレヘムへ帰り着いたのは、ちょうど大麦の刈り入れが始まったころでした。

ボアズとの出会い

ところでナオミには、夫の一族でベツレヘムに住むボアズという一人の有力な親戚がいました。

ある日、ルツはナオミに申し出ました。「お母さん、私、どなたか親切な方の畑で、刈り入れをする人たちのあとについて落ち穂を拾わせてもらおうと思うの。」

「すまないね、そうしてくれるかい。」

そこでルツは出かけて行って落ち穂を集めたのですが、なんと、その畑はボアズの畑でした。 4-5 ルツがまだ畑にいるうちに、ボアズがベツレヘムの町から来ました。雇い人たちとひと通りあいさつをすませると、ボアズは監督役の者に尋ねました。「あそこにいるのは、どこの娘さんかね。」

「あれは、ナオミといっしょにモアブから参った娘でございます。 落ち穂を拾わせてほしいと、今朝から来まして、とにかく、木陰で休みもせず、ああしてずっと立ち働いているのです。」

8-9 ボアズはルツのそばに歩み寄ってことばをかけました。「こんにちは。精が出ますね。いいですか、いつも私のところで落ち穂を拾いなさい。ほかの畑に行くことはありません。私のところの女たちのあとにしっかりついてお行きなさい。若い者にも、あなたを困らせないように注意しておきましたから。それから、のどが渇いたらあそこで自由に水を飲みなさい。」

10-11 ルツはありがたくて、何と言ってよいかわかりません。「どうして、私みたいな者に、そんなに親切にしてくださるのですか。よそ者ですのに。」

「もちろん、それは知っていますよ。それに、あなたがご主人を亡くしてからもしゅうとめのために一生けんめい尽くしたことや、生まれ故郷を離れて見知らぬ国まで来たことも聞いています。 12 どうかイスラエルの神、主が、その翼の下に避け所を求めてやって来たあなたを祝福してくださるように。」

13 「ほんとうに、もったいないことです。使用人でもありませんのに、こんなに親切にしていただいて。」

14 昼食の時、ボアズはルツに、「さあこちらに来て、いっしょにお食べなさい」と声をかけました。ルツが農夫たちと並んで腰をおろすと、ボアズは食べきれないほどの食べ物を取り分けてくれました。 15 そして、彼女が再び落ち穂拾いに戻ると、若者たちにこう命じました。「じゃまをしないで、麦の束の間でも落ち穂を拾わせてやりなさい。 16 そして、もっと拾いやすいように、穂を抜き落としておきなさい。とやかく言ってはなりません。」

17 こうしてルツは一日中、そこで落ち穂を拾い集めました。夕方になって、集めた大麦の穂を打ってみると、なんと一エパ(二十三リットル)にもなりました。 18 それをかかえて町へ戻り、しゅうとめのナオミに見せ、また、昼食の残りも差し出しました。

19 「まあ、ずいぶんたくさんだこと!」ナオミは思わず声を上げました。「いったい、どこで拾って来たの。こんなに親切にしてくださった方のために、心から主に感謝しましょう。」ルツはしゅうとめに、ボアズの畑に行ったことなど一部始終を話しました。 20 それを聞いて、ナオミはまたびっくりし、「ボアズさんですって! 主よ、ありがとうございます。神様のお恵みは、あなたが夫を亡くした時に終わったんじゃなかったのだわ。お恵みはずっと注がれていたのだね。だって、その方は一番近い親戚の一人なんですから。」

21 「まあ、そうですの。あの方は、刈り入れが全部終わるまで、毎日、落ち穂を拾い集めていいとおっしゃったわ。」

22 「それはよかったこと。それじゃおことばに甘えて、刈り入れの間中、あの方のところで若い女たちといっしょにお世話になりなさい。ほかの畑に行くよりずっと安心よ。」

23 こうしてルツは、大麦と小麦の刈り入れが終わるまで落ち穂を拾い続けました。

打ち場での出来事

ある日、ナオミはルツに話しかけました。「ねえ、ルツや。そろそろあなたも良いお婿さんを見つけて幸せにならなければね。 実は、これはと思っている人がいるの。あのボアズさんよ。あの方はとっても親切にしてくださったし、近い親戚でもあるからね。たまたま耳にしたんだけど、今夜、あの方は打ち場で大麦をふるい分けるって話よ。 さあ、私の言うとおりにしておくれ。体を洗って香油を塗り、きれいな服を着て、打ち場へお行き。ただし、あの方が夕食をすますまでは気づかれないようにね。 あの方がお休みになる場所をちゃんと見届けてから、そっと入って行き、足もとの覆いをまくって横になりなさい。あとはあの方が、あなたがどうすべきかを教えてくださるでしょう。」

「わかりました。おっしゃるとおりにします。」

6-7 ルツはしゅうとめに教えられたとおり、その夜、打ち場に出かけて行きました。ボアズは食事をすますとすっかり心地よくなって、積み重ねてある麦のそばにごろりと横になり眠ってしまいました。そこで、ルツはそっと忍び寄り、ボアズの足もとの覆いをまくって横になりました。 真夜中に目を覚ましたボアズは、びっくりして跳び起きました。なんと、足もとに女が寝ているではありませんか。

「だれだ、おまえは!」とボアズが問いただすと、ルツは答えました。「ボアズ様、私ルツでございます。どうぞ、神様の律法に従って私を妻にしてください。あなた様はその権利がある親類ですから。」

10 「ルツよ。あなたのようなすばらしい女性は見たことがない。こんなにまでしてナオミに尽くしているとは。貧しくてもまだ若いのだから、若い男に心をひかれても不思議ではないのに、そんな気持ちよりも、買い戻しの権利を持つ私と結婚してナオミのために世継ぎを残そうというのか。 11 ルツよ、何も心配はいらないよ。望みどおりにしてあげよう。あなたがすばらしい女性だということは、だれもが知っているのだから。 12 ただ、一つだけ問題がある。確かに私は近い親戚には違いないが、もっと近い親戚がいるのだ。 13 とにかく今夜はここで休みなさい。朝になったら、その人と話をつけることにしよう。もしその人があなたを妻に迎えるというなら、そのようにしてもらおう。義務を果たさせるまでだ。だが、もし断ったら、私が責任を果たそう。今ここで、はっきり主に誓うよ。さあ安心して、朝までここで休みなさい。」

14 ルツは言われたとおりボアズの足もとに寝ましたが、夜明け前に起きました。ボアズが、「この打ち場に来たことをだれにも知られないように」と注意したからです。 15-18 「あなたの肩掛けを持って来なさい。」ボアズはそう言うと、しゅうとめへのみやげにと、大麦六杯をその中へ入れてルツに背負わせました。こうしてルツは町へ帰りました。

帰宅すると、ナオミが「どうだったの?」と尋ねました。聞かれるままにあったこと全部を話し、ボアズから受け取った大麦を渡しました。そして、「何も持たずに帰ってはいけない」と言ったボアズのことばも、忘れずに伝えました。ナオミはうなずきました。「そう、ではどうなるのか、何か知らせがあるまでおとなしくしていましょう。ボアズさんのことですもの、決着がつくように最善を尽くしてくださるわ。きっと、今日にもめどをつけてくださいますよ。」

ルツの結婚

さて、ボアズはさっそく広場に出かけ、目ざす相手を見つけました。「ちょっと折り入ってお話ししたいことがあるのですが、いいですか。」

二人は並んで腰をおろしました。 それからボアズは町の指導者十人を招き、証人になってくれるように頼みました。 万事の手はずが整うと、ボアズは相手に話を切り出しました。「モアブから帰って来たナオミのことは、ご存じですね。実は、あの人が私たちの身内のエリメレクの畑を売りたいと言っています。 そのことをお耳に入れるべきだと思ったのです。ここに証人の方々もおられるので、よかったら、畑を買ってください。いかがですか? はっきりしたお返事を頂きたいのです。もし、そうされないなら私が買いましょう。ただ、一番にそれを買い戻す権利はあなたにあって、私はその次なのです。」

その親戚の者は言いました。「いいだろう。買うことにしよう。」

そこで、ボアズは言いました。「ところで、ナオミから畑を買い戻すとなると、ナオミの嫁ルツを妻に迎えてもらわなければなりません。ルツは子どもをもうけ、その地を相続させて、亡き夫の名を残さなければなりませんから。」

すると彼は言いました。「そんなことなら、私は降りる。生まれてくる子にまで財産を分けてやるなんて、それは困る。あなたが買ってくれないか。」

当時イスラエルでは、人が買い戻しの権利を譲る時は、くつを脱いで相手に渡す習慣がありました。こうして、すべての取り引きが公認となるのです。 その人はボアズに「あなたに譲る」と言って、くつを脱ぎました。 ボアズは、同席の証人や長老たちに向かって言いました。「では皆さん。今日、私がナオミから、エリメレクおよびキルヨンやマフロンの全財産を買い取ったことを、お認めいただけますね。 10 また、マフロンの未亡人でモアブ人のルツも、妻として譲り受けることになります。ルツの産む子どもは亡くなった夫の家名を継ぐことができるのです。このことの証人になっていただけますか。」

11 すると、その場に居合わせた人々は、証人として答えました。「喜んで証人となりましょう。どうか主が、あなたがお迎えになる女に、イスラエル国民の母ラケルとレアのように、子どもを大ぜいお授けくださるように。またあなたも、ベツレヘムで大いに栄えられますように。 12 その昔、主がわれらの先祖ペレツを、タマルを通してユダにお与えくださったように、あなたもこの若い女を通して子どもを授かり、末長く繁栄されますように。」

孫を授かったナオミ

13 こうしてボアズはルツと結婚し、まもなく彼女は男の子を授かりました。 14 女たちはナオミに言いました。「よかったわね。主がこんなにかわいいお孫さんを授けてくださるなんて。きっとこの子はイスラエルでその名が知られるようになるわ。 15 おかげで、あなたは若返り、老後の心配もありませんね。何しろ、あんなに母親思いで、七人の息子にもまさるあなたのお嫁さんから生まれた子どもなんだもの。」

16-17 ナオミはその赤ん坊を手塩にかけて育てました。近所の女たちは、「ごらんなさいよ。あのナオミさんに、また男の子が生まれた」と言って、その子にオベデ(「仕える者」の意)という名をつけました。オベデはエッサイの父で、ダビデ王の祖父となった人です。

ダビデの系図

18-22 先祖ペレツから始まるボアズの家系は次のとおりです。ペレツ、ヘツロン、ラム、アミナダブ、ナフション、サルモン、ボアズ、オベデ、エッサイ、ダビデ。

サムエルの誕生

これは、エフライムの山地のラマタイム・ツォフィムに住んでいた、エフライム人エルカナの物語です。エルカナの父はエロハム、エロハムの父はエリフ、エリフの父はトフ、トフの父はツフといいました。 エルカナには、ハンナとペニンナという二人の妻があり、ペニンナには何人もの子どもがいたのに、ハンナは子どもに恵まれませんでした。

エルカナの一家は毎年シロにある主の宮に出かけ、天地の主である神を礼拝しては、いけにえをささげていました。当時の祭司は、エリの二人の息子ホフニとピネハスでした。 いけにえをささげ終えると、エルカナは、ペニンナと子どもたち一人一人に贈り物を与え、盛大に祝いました。 彼はだれよりもハンナを愛していましたが、一人分の贈り物しか与えることはできませんでした。主が彼女の胎を閉ざしていたので、贈り物をしようにも子どもがいなかったのです。 さらに困ったことは、ペニンナがハンナに子どもがないことを意地悪く言うことでした。 毎年、シロに来ると必ずそうなるのです。ペニンナはハンナをあざけり、笑い者にしたので、ハンナは泣いてばかりいて、食事ものどを通らない有様でした。 「ハンナ、どうした?」エルカナは心配顔でのぞき込みました。「なぜ食べないのだ。子どもがないからといって、そんなに思い悩むことはないよ。あなたにとって、私は十人の息子以上ではないのか。」

シロ滞在中のある夜のこと、夕食後にハンナは宮の方へ行きました。祭司エリが、いつものように入口のわきの席に座っていました。 10 ハンナは悲しみのあまり、主に祈りながら、激しくむせび泣きました。 11 そして、次のような誓願を立てたのです。「天地の主よ。もしあなたが、私の悲しみに目を留めてくださり、この祈りに答えて男の子を授けてくださるなら、その子を必ずあなたにおささげいたします。一生あなたに従う者となるしるしに、その子の髪の毛を切りません。」

12-13 エリは、ハンナのくちびるが動くのに声が聞こえないので、酔っているのではないかと思って言いました。 14 「いつまで酔っ払っているのか。早く酔いをさましなさい。」

15-16 「いいえ、祭司様。酔ってなどいません。ただ、あまりに悲しいので、私の胸のうちを洗いざらい主に申し上げていたのです。どうか、酔いどれ女だなどとお思いにならないでください。」

17 「そうか、よしよし。元気を出しなさい。イスラエルの主が、あなたの切なる願いをかなえてくださるように。」

18 「ありがとうございます、祭司様。」ハンナは晴れやかな顔で戻って行くと、食事をして元気になりました。

19-20 翌朝、エルカナ一家はこぞって早起きし、宮へ行ってもう一度主を礼拝し、ラマへと帰って行きました。その後、主はハンナの願いを聞いてくださり、ハンナは身ごもって男の子を産みました。ハンナは、「あれほど主に願った子どもだから」と言って、サムエル〔「神に願った」の意〕という名をつけました。

サムエルをささげたハンナ

21-22 翌年、エルカナはペニンナとその子どもたちだけを連れて、シロへ年ごとの礼拝に出かけました。ハンナが、「この子が乳離れしてからにしてください。この子は宮にお預けするつもりです」と、同行しなかったからです。 23 エルカナはうなずきました。「いいだろう。あなたが一番いいと思うとおりにしなさい。ただ、主のお心にかなうことがなされるように。」こうしてハンナは、サムエルが乳離れするまで家で育てました。

24 そののち、ハンナとエルカナは、いけにえとして三歳の雄牛一頭、小麦粉一エパ(二十三リットル)、皮袋入りのぶどう酒を携え、まだ幼いその子をシロへ連れ上りました。 25 いけにえをささげ終えると、二人はその子を祭司エリのところへ連れて行きました。 26 ハンナはエリに申し出ました。「祭司様。私のことを覚えておいででしょうか。かつて、ここで主に祈った女でございます。 27 子どもを授けてくださいと、おすがりしたのです。主は願いをかなえてくださいました。 28 ですから今、この子を生涯、主におささげしたいのです。」

こうしてハンナは、その子を主に仕える者とするため、エリに預けたのです。

ハンナの祈り

ハンナは祈りました。

「ああ、うれしゅうございます、主よ。
こんなにも祝福していただいて。
私は敵にはっきり答えることができます。
主が悩みを取り去ってくださいましたから。
私は喜びでいっぱいです。
主のように聖なるお方はありません。
あなたのほかに神はないのです。
私たちの神のような大岩はありません。
思い上がりも、尊大さも許されません。
主は何もかもご存じで、
すべての行為をおさばきになるのです。
力を誇った者が弱くなり、
弱かった者が今や強くなっています。
満ち足りていた者が今は飢え、
飢えていた者が満ち足りています。
不妊の女が今は七人の子持ちとなり、
多産の女がもう子を産めません。
主は殺し、
主はいのちをお与えになります。
主は、ある人々を貧しくし、
また、ある人々を裕福になさいます。
主はある者を倒し、
また、ある者を立ち上がらせてくださいます。
主は、貧しい者をちりの中から、灰の山から引き上げ、
高貴な者のように取り扱い、
栄光の座につかせてくださいます。
この世はすべて主のものですから。
主はこの世界をふさわしくされました。
主は信仰者を守られます。
しかし、悪者は暗闇に葬り去られます。
だれも自力でははい上がれません。
10 主は手向かう者を打ちのめし、
天から彼らに雷鳴をとどろかせます。
主は地を隅々までさばき、
ご自分が選んだ王に特別な力を授け、
主に油注がれた者に大きな栄誉をお与えになるのです。」

11 そののちエルカナとハンナは、サムエルを残してラマに帰りました。幼いサムエルは、祭司エリのもとで主に仕える者となりました。

エリの息子たち

12 ところでエリの息子たちは、主をないがしろにする、不道徳でよこしまな者たちでした。 13-14 いけにえをささげている人がいると、しもべを送り、いけにえの動物の肉が煮えている大なべの中に、そのしもべが三つ又の肉刺しを突き刺して、これらはみなエリの息子のものだと宣告しました。彼らは、いけにえをささげて礼拝するためにシロにやって来るすべてのイスラエル人に対して、このように行っていました。 15 時には、祭壇で脂肪を焼く儀式が行われないうちから、しもべをやって、生の肉をよこせと言うことさえありました。焼き肉にして食べるためでした。

16 いけにえをささげている人が、「いくらでもお取りになってけっこうです。しかし、まず〔律法のとおりに〕脂肪をすっかり焼いてしまわなければなりません」と答えると、使いの者はこう言うのです。「いや、たった今ほしいのだ。つべこべ言うなら、力ずくでももらうぞ。」

17 こんなふうに、彼らは主の前に非常に大きな罪を犯しました。主へのささげ物を侮るようなことをしたからです。

18 サムエルはまだ子どもでしたが、一人前の祭司のように、小さな亜麻布の儀式服を着て、主に仕えていました。 19 毎年、母親が小さな上着をこしらえ、夫とともに、いけにえをささげに来る時に持って来てくれていたのです。 20 エルカナとハンナが家路につく前に、エリは二人を祝福し、主にささげた子の代わりに、もっと子どもが授かるよう主に願い求めてくれました。 21 それで主はハンナに、三人の息子と二人の娘を授けました。一方、少年サムエルは、主のもとで成長していきました。

22 エリはすでに高齢に達していましたが、身辺の出来事についてはよくわきまえていました。例えば、息子たちが幕屋(聖所)の入口で仕えている女たちを誘惑したことも、ちゃんと知っていました。

23-25 エリは息子たちを呼びつけて注意しました。「私は民から、おまえたちのおぞましい悪行についてさんざん聞かされた。よくも民を罪に惑わすようなことをしてくれたものだ。少しの罪でもきびしい罰が下るのに、主に対するおまえたちの罪には、どれほど重い罰が下るか知れたものではない。」

しかし、息子たちは耳を貸そうともしませんでした。というのは、主がすでに、この二人のいのちを絶とうとしていたからです。

26 一方、少年サムエルはすくすく育ち、人からも神からも愛されました。

エリへの預言

27 ある日、一人の預言者が来て、エリに主のことばを伝えました。「イスラエルの民がエジプトで奴隷だった時、わたしははっきり力を示したではないか。 28 そして、なみいる同胞の中からあなたの先祖レビを選んで、祭司としたのではなかったか。その務めは、わたしの祭壇でいけにえをささげ、香をたき、祭司の服を着て仕えることだった。わたしは、あなたがた祭司にも、いけにえのささげ物を分け与えたではないか。 29 それなのに、どうしてささげ物を一人占めしようとするのか。わたしよりも息子のほうが大事なのか。よくも親子して最上のささげ物によって肥え太ったものだ。

Japanese Living Bible (JLB)

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