Bible in 90 Days
11 こうしてソロモンは、神殿と王宮とを建て終わりました。すべてが計画どおり実現したのです。
ソロモンに現れた主
12 ある夜、主は夢でソロモンに現れ、語りました。「わたしはあなたの祈りを聞いた。また、あなたがたがいけにえをささげる場所として、わたしはこの神殿を選んだ。 13 わたしが天を閉ざしたため雨が降らなくなったり、いなごの大群が穀物を食い尽くしたり、伝染病が大流行したりした場合、 14 もし、わたしの民がへりくだって祈り、悪い道から離れてわたしに立ち返るなら、天からその祈りを聞き、彼らの罪を赦し、この地を元どおりにしよう。 15 この場所でのすべての祈りに耳を傾け、目を留めよう。 16 わたしが、この神殿を永遠のわたしの家として選んで聖別したのだから、わたしの心はいつもここにある。
17 あなたが、父ダビデのようにわたしに従うなら、 18 約束どおり、あなたとあなたの子孫を代々イスラエルの王としよう。 19 しかし、もしわたしに従わず、わたしの教えに背いて偶像を拝むなら、 20 この地からわたしの民を滅ぼしてしまおう。わたしのために確保しておいたこの神殿も滅んで、多くの人の恐れとなり、物笑いの種となるだろう。 21 神殿が有名だっただけに、そのそばを通る者はみな、驚きのあまりつぶやくだろう。『どういうわけで、主はこの地とこの神殿とに、こんなむごいことをなさったのか』と。 22 すると、こうした答えが返ってくるだろう。『この地の民は、先祖をエジプトから導き出してくださった神を捨てて、ほかの神々を拝んだので、このようなことになったのだ』と。」
その他のソロモンの事業
8 ソロモンが王となってから二十年かかって、神殿と王宮が完成しました。 2 そこでソロモンは、ツロの王フラムから譲り受けた町々の再建に力を入れ、イスラエル人の一部をそこに住まわせました。
3 そのころ、ソロモンはハマテ・ツォバの町を攻めて占領し、 4 荒野にタデモルの町を建て、物資の補給所としてハマテに幾つかの町を建てました。 5 また、上ベテ・ホロンと下ベテ・ホロンの町を要塞化しました。この二つの町は共に物資の補給所で、城壁で囲まれ、門にはかんぬきがかけてありました。 6 同じころ、バアラテその他の、物資の補給所となる町々や、戦車や馬を置く町々を建設しました。こうして王は、エルサレムとレバノンはじめ、すべての領地に建てたいと思っていたものをみな建設したのです。
7-8 ソロモンは、イスラエル人が国内に残しておいた外国人の子孫であるヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を強制労働者として徴用しました。今日でもそうです。 9 しかし、イスラエル人は奴隷としてではなく、兵士、将校、戦車隊員、騎兵隊員として用いました。 10 また、イスラエル人のうち二百五十人を、行政全般を担当する役人に取り立てました。
11 ソロモンはエジプトの王ファラオの娘であった妻を、エルサレムの一角にあるダビデの町から、彼女のために建てた新しい王宮に移しました。かねがね、「私の妻はダビデの家に住んではならない。そこは主の箱のある聖なる場所だからだ」と言っていたからです。
12 それからソロモンは、神殿の玄関の前に築いた祭壇に、主のために焼き尽くすいけにえをささげました。 13 いけにえの数は、モーセの指示どおり、日によって違いました。安息日、新月の祭り、それに年の三回の例祭である過越の祭り、七週の祭り、仮庵の祭りには、特別のいけにえをささげました。
14 王は父ダビデが用意した当番表に従って、祭司を務めに就かせました。またレビ人を、毎日の日課に従って賛美の奉仕と祭司を補佐する仕事に就かせ、門衛をそれぞれの門に配置しました。 15 王は、これらのことについて、また宝物倉の管理について、ダビデ王の指示からどんな点でもそれませんでした。 16 このように、ソロモンは神殿の建設を見事に完成させたのです。
17-18 それから王は、フラム王が寄贈した船団の進水式に臨むため、エドムにある海港の町エツヨン・ゲベルとエラテへ行きました。この船団は、ソロモン王の乗組員とともにフラム王の熟練した乗組員を乗せてオフィルに行き、四百五十タラント(十五・三トン)の金を手にし、ソロモン王のもとに持ち帰ったのです。
シェバの女王の来訪
9 そのころ、ソロモン王の知恵のすばらしさを伝え聞いたシェバの女王は、難問をしかけて王を試そうとエルサレムにやって来ました。香油や金、宝石をらくだに山と積んで、大ぜいの家来や召使を従えて来ました。 2 ソロモンは、彼女のすべての質問に明快に答えました。わからないことは一つもなく、何でも説き明かすことができました。 3 女王はその知恵の深さにたいそう驚き、王宮の美しさにもすっかり圧倒されました。 4 そのうえ、食卓の料理の豪勢なこと、王に仕える家来や従者の多いことは目をみはるばかりでした。彼らのそろいの服装、威儀を正した側近たち、王を護衛する人々を見て、息も止まりそうでした。
5 そこで彼女は、思ったとおりをソロモン王に言いました。「私の国であなたについてお聞きしたことは、みなほんとうでした。 6 実は、ここに来てこの目で拝見するまでは、とても信じられませんでした。あなたは、私が想像していたより、はるかにすばらしい知恵をお持ちです。 7 おそばにいて、あなたのお話を聞けるこの方々はなんと幸せなことでしょう。 8 あなたの神がほめたたえられますように。あなたの神はイスラエルをことのほか愛しておられるので、あなたのようなすばらしい王をお立てになったに違いありません。きっと、イスラエルがいつまでも偉大な、強い民であることを望んでおられるのです。」 9 女王はソロモンに、百二十タラントの金と、最高の品質を誇る大量の香油、それに数えきれないほどの宝石を贈りました。
10 フラム王とソロモン王の乗組員たちは、オフィルから、金のほかに、びゃくだんの木材と宝石を運んで来ました。 11 王は、そのびゃくだんで神殿と王宮のひな壇を造り、また、合唱隊の竪琴や琴も作りました。このような見事な楽器は、これまでユダのどこにもありませんでした。
12 ソロモン王はシェバの女王に、もらった贈り物に見合う品物を贈り、さらに、彼女が望む物は何でも与えました。それから、女王とその家来の一行は自分の国へ帰って行きました。
ソロモンの栄華と死
13-14 ソロモン王は毎年、アラビヤの王たちや、貢ぎ物を納める他の国々から、金にして六百六十六タラントの収入がありました。そのほか、王の貿易商による交易収入がありました。 15-16 王は、一個に六百シェケル(六・九キログラム)の金を使った大盾二百と、一個に三百シェケルの金を使った小盾三百を作り、王宮の「レバノンの森の間」に置きました。 17 また、大きな象牙の王座を作り、これに純金をかぶせました。 18 金の足台のついたその王座には、六つの金の段がありました。座席の両側には金のひじかけがついていて、そのわきには二頭の金のライオン像が立っていました。 19 六つの段の両わきにも、それぞれ一頭ずつ金のライオン像が立っていました。これと比べられるような王座は、世界のどこにもありませんでした。 20 王の杯はみな純金で作られ、「レバノンの森の間」にある器物もすべて純金製でした。銀は、ソロモンの時代にはそれほど値打ちのないものとみなされていたのです。 21 王は三年に一度、フラム王の提供する船員を使ってタルシシュへ船を送り、金、銀、象牙、さる、くじゃくなどを運ばせました。
22 こうしてソロモン王は、世界中のどの王よりも富と知恵にまさっていました。 23 あらゆる国の王が、ソロモン王から、神が彼に授けた知恵のことばを聞こうと会いにやって来ました。 24 彼らはおのおの、金や銀の鉢、衣服、武器、香油、馬、らばなどを、年ごとの贈り物として携えて来ました。
25 このほか、ソロモン王は四千の馬屋と戦車、それに騎兵一万二千を戦車の町々に配置し、また、エルサレムでの王宮警護に当たらせました。 26 ユーフラテス川からペリシテ人の地、さらにエジプトの国境に至る地域のすべてが、王の支配地でした。 27 エルサレムでは、銀が路上の石同然に大量に使われ、杉の木が桑の木のようにふんだんに用いられました。 28 馬は、エジプトなどの国々から運ばれて来ました。
29 そのほかのソロモン王の業績は、『預言者ナタンの言行録』『シロ人アヒヤの預言書』および、『先見者イドの見たネバテの子ヤロブアムについての幻の記録』に載っています。
30 ソロモンはエルサレムで四十年間、イスラエルを治めました。 31 王は死んでエルサレムに葬られ、その子レハブアムが新しく王となりました。
王国の分裂
10 イスラエルの全指導者は、レハブアムの即位を祝おうとシェケムに集まりました。 2-3 一方、ネバテの子ヤロブアムの支援者たちは、使いを出してソロモン王の死をヤロブアムに伝えました。彼はその時、ソロモン王を避けてエジプトに逃げていたのです。急いで帰国したヤロブアムは、即位式に出席して、人々の要求をレハブアムに突きつけました。 4 「お父上は過酷な労働を強いていました。どうか、お父上が私たちに負わせた重い苦役を軽くしてください。そうすれば、あなたを王として受け入れます。」
5 レハブアムは、三日後に返事をするからまた来るようにと伝えました。 6 そして彼はさっそく、この申し出について、父ソロモンに仕えていた長老たちに、「彼らにどう答えたものだろうか」と相談しました。
7 長老たちはレハブアムに答えました。「彼らの王になろうと願われるなら、彼らに好意を示し、親切にすることです。」
8-9 しかし、レハブアムは長老たちの助言を退け、彼といっしょに育った若者たちに意見を求めたのです。「君たちは、どうしたらよいと思うか。父がしたよりも、彼らの負担を軽くしてやるべきだろうか。」
10 若者たちは答えて言いました。「いいえ! こう言っておやりなさい。『もし、父が重い苦役をおまえたちに負わせたと考えているなら、私がどのようにするか、楽しみに待っているがよい』と。それから、こう言うのです。『私の小指は、父の腰よりも太い。 11 負担を軽くするどころか、もっと重くしよう。父はおまえたちを懲らしめるのに鞭を使ったが、私はさそりを使おう。』」
12 ヤロブアムと民は、三日後、返事を聞きに戻って来ました。 13 レハブアムは荒々しい口調で答えました。長老たちの助言を退け、 14 若者たちの言いなりになったからです。
「父はおまえたちに重い苦役を負わせたが、私はもっと重くしてやろう。父は鞭でおまえたちを懲らしめたが、私はさそりで懲らしめてやる。」
15 こうして王は、人々の願いを聞き入れませんでした。こうなったのは、シロ人アヒヤによってヤロブアムに告げられた預言が実現するよう、神が仕向けていたからです。
16 これを聞いたイスラエルの民は、王を見限りました。彼らは腹立ちまぎれに、「ダビデの家もこれまでだ。だれかほかの人を王にしよう。レハブアムはユダの部族だけ治めればいい。さあ、帰ろう」と言いながら、帰って行きました。
17 ユダ族はレハブアムに忠誠を誓いました。 18 そののちレハブアムは、イスラエルの他の部族から労働者を集めようとしてハドラムを遣わしましたが、人々は石を投げつけて彼を殺しました。この知らせを受けた王は、戦車に飛び乗ってエルサレムに逃げ帰りました。 19 このようにイスラエルは、今日も、ダビデの家に治められることを堅く拒んでいるのです。
ユダの王レハブアム
11 エルサレムに戻ったレハブアムは、ユダとベニヤミンのえり抜きの勇士十八万人を召集し、王国の再統一を目指して、他のイスラエルの諸部族に戦いを挑もうとしました。 2 その時、主は預言者シェマヤに命じました。 3 「行って、ソロモンの子であるユダの王レハブアムと、ユダとベニヤミンの人々に伝えよ。 4 『主はこう言われる。兄弟と戦ってはならない。みな家へ帰れ。彼らの反逆はわたしが仕向けたものだ。』」人々は、この主のことばを聞いて、ヤロブアムと戦うことをやめました。
5-10 レハブアムはエルサレムにとどまり、守りを固めるため、次のユダの町々を城壁と城門で要塞化しました。ベツレヘム、エタム、テコア、ベテ・ツル、ソコ、アドラム、ガテ、マレシャ、ジフ、アドライム、ラキシュ、アゼカ、ツォルア、アヤロン、ヘブロン。
11 王はまた、多くのとりでを再建して部隊を配置し、そこに食糧、オリーブ油、ぶどう酒などを蓄えました。 12 すべての町の武器貯蔵庫には盾と槍を備え、さらに守りを強化しました。王の側についていたのは、ユダとベニヤミンの二部族だけだったからです。
13-14 しかし、他の部族出身の祭司とレビ人は、自分の地を捨て、ユダとエルサレムに移って来ました。ヤロブアムが彼らの祭司職を解き、 15 別に祭司を任命して、人々に偶像礼拝を奨励し、自らが高台に築いた雄やぎや子牛の像にいけにえをささげさせたからです。 16 イスラエル全土にいる神を忠実に信じる人々も、自由に父祖の神、主を礼拝し、いけにえをささげることができるエルサレムに移って来ました。 17 その結果、ユダ王国は強くなり、三年間、大きな困難もなく保たれました。この間、レハブアム王が、ダビデ王とソロモン王にならい、真剣に主に従おうと努めたからです。
18 レハブアムは、親族のマハラテを妻にめとりました。彼女は、ダビデの子エリモテと、ダビデの兄弟エリアブの娘アビハイルとの間にできた娘です。 19 この結婚によって、エウシュ、シェマルヤ、ザハムの三人の息子が生まれました。
20 王はその後、アブシャロムの娘マアカを妻にしました。彼女はアビヤ、アタイ、ジザ、シェロミテを産みました。 21 彼は他のすべての妻、そばめにまさってマアカを愛しました。彼には十八人の妻、六十人のそばめがいて、全部で息子が二十八人、娘が六十人生まれました。 22 マアカが産んだアビヤは王のお気に入りだったので、アビヤを次の王にしたいと考えました。 23 そこでレハブアムは、慎重に、しかも賢く、ほかの息子たちをユダとベニヤミンにある要塞の町々に分散させたうえ、十分な手当を支給し、それぞれに数人の妻をあてがいました。
エジプトの王シシャクの攻撃
12 ところがレハブアムは、彼の人気が高まり、力がついてくると、主を捨ててしまいました。そして民も、王の罪にならいました。 2 その結果、エジプトの王シシャクが、レハブアム王の第五年にエルサレムを攻撃して来ました。 3 戦いには、戦車千二百台、騎兵六万、エジプト人、リビヤ人、スキ人、エチオピヤ人からなる、数えきれないほどの大軍が加わりました。 4 シシャク王は、たちまちユダの要塞の町々を占領し、ついにエルサレムまで攻め上りました。 5 その時、預言者シェマヤは、レハブアム王と、難を避けてエルサレムに逃げて来たユダ各地の指導者たちに会い、こう言いました。「主は言われる。『あなたがたはわたしを捨てた。それで、わたしもあなたがたを捨て、シシャクの手に渡す。』」 6 すると、王と指導者たちは罪を告白し、「私たちをこのようになさる主は正しい」と言いました。 7 このへりくだった様子を見た主は、シェマヤにこう語らせました。「あなたがたがへりくだったので、すべて滅ぼすようなことはしない。シシャクの手によって、エルサレムに怒りを注ぐことはやめよう。 8 ただし、シシャクに貢ぎ物を納めなければならない。シシャクに仕えるよりも、わたしに仕えるほうがどれほど幸いか、よくよくわかるだろう。」
9 シシャクはエルサレムを占領し、神殿と王宮の財宝を全部奪い取り、ソロモンの金の盾も奪い取りました。 10 そこでレハブアム王は、代わりに青銅の盾を作り、護衛隊長に保管させました。 11 王が神殿に入る時、護衛兵がその盾を持ち、あとで武器貯蔵庫に戻すのです。 12 王がへりくだった時、主の怒りは収まったので、徹底的に懲らしめられるようなことはありませんでした。事実、シシャクの侵略を受けてからも、ユダの経済力は衰えませんでした。
13 レハブアム王は、主がイスラエルのすべての町から、ご自分の住まいとして選んだ町エルサレムで、十七年の間治めました。彼が王となったのは四十一歳で、母はナアマといい、アモン人の女でした。 14 彼は、心から主を喜ばせようとしたことがない、悪い王でした。
15 レハブアム王の業績については、『預言者シェマヤと先見者イドの書いた言行録』および系図にくわしく記されています。レハブアムとヤロブアムとの間には、絶えず戦いがありました。 16 レハブアムは死んでエルサレムに葬られ、その子アビヤが新しく王となりました。
ユダの王アビヤ
13 1-2 アビヤは、イスラエルの王ヤロブアムの第十八年に、エルサレムで、ユダの新しい王となりました。彼は三年の間王位にあり、母はギブア出身のウリエルの娘ミカヤ(マアカ)でした。彼が王になってまもなく、ユダとイスラエルとの間に戦争がありました。 3 アビヤ王の率いる、鍛え抜かれた四十万のユダ軍は、ヤロブアム王の率いる、強力なイスラエル軍八十万と対抗しました。 4 ユダ軍がエフライムの山地にあるツェマライム山に到着した時、アビヤ王は、ヤロブアム王とイスラエル軍に向かって叫びました。
5 「よく聞け! ダビデ王の子孫が代々イスラエルの王になるという主の約束を、よもや知らぬはずはあるまい。 6 おまえたちの王ヤロブアムは、ダビデの子ソロモンの家来で、主君に反逆した者ではないか。 7 そのうえ、ろくでもない不満分子の集団が加わって、ソロモンの子レハブアムに公然と反抗した。レハブアムはまだ若く、臆病だったので、立ち向かうことができなかった。 8 ほんとうにおまえたちは、ダビデの子孫の治める主の王国を、打ち負かせるとでも思っているのか。おまえたちの軍勢は、われわれの二倍もあるが、ヤロブアムが神だと言って造った金の子牛のためにのろわれているのだ。 9 おまえたちは主の祭司とレビ人を追い出し、代わりに異教の祭司を任命した。ほかの民族のように、若い雄牛一頭と雄羊七頭を持って来る者をだれかれなく受け入れ、おまえたちの神ならぬものの祭司にしている!
10 だが、われわれはイスラエルの神を信じる。神を捨てるようなことはしなかった。それに、アロンの直系の子孫だけが祭司で、その働きを助けるのはレビ人だけだ。 11 彼らは朝夕、焼き尽くすいけにえを主にささげ、香りの高い香をたき、供えのパンを聖なる机の上に置いている。金の燭台には、毎晩、火がともされている。このように、われわれは主の教えを忠実に守っているが、おまえたちはその主を捨ててしまった。 12 これではっきりわかるように、神はわれわれとともにおられ、導いておられる。しかも、主に仕える祭司たちは進軍ラッパを吹き鳴らして、われわれをおまえたちと戦わせようとしている。イスラエルよ、父祖の神、主と戦ってはならない! とうてい勝ち目はないのだから。」
13-14 その間にヤロブアムは、こっそり伏兵を相手の背後に回らせたので、ユダは敵にはさまれたかたちになりました。それを知ったユダの民は主にあわれみを求めて叫び、祭司たちはラッパを吹き鳴らし、 15-16 一斉にときの声を上げました。すると、戦いの流れがイスラエルからユダに変わりました。 17 その日、アビヤ王とユダ軍は、イスラエル軍のえり抜きの兵士五十万を打ちました。
18-19 こうしてユダは、父祖の神、主に信頼してイスラエルを破り、ヤロブアム王の軍勢を追い散らしました。そして、その支配下にあったベテル、エシャナ、エフラインの町、さらに周辺の村々を占領しました。 20 イスラエルの王ヤロブアムは、アビヤ王が生きている間勢力を挽回することができず、ついに主に打たれて死にました。
21 そうする間にユダの王アビヤは力を増し、十四人の妻をめとり、二十二人の息子と十六人の娘をもうけました。 22 アビヤ王の言行のすべては、『預言者イドの注解』に記されています。
ユダの王アサ
14 アビヤ王はエルサレムに葬られ、その子アサが新しくユダの王となりました。アサが王になった最初の十年間、この地には平和が続きました。 2 アサが心から神に従っていたからです。 3 王は高台の偶像の祭壇を取り壊し、柱を砕き、忌まわしいアシェラ像を切り倒しました。 4 そして、全国民に、父祖の神、主の教えに従うよう命じ、 5 ユダのすべての町から、高台にある太陽神の像と香の祭壇を取り払いました。それで神は、彼の王国に平和を与えたのです。 6 こうしてユダに、城壁のある防備の町々を築くことが可能になりました。
7 王は民に語りました。「今こそ、要塞の町を建てる時だ。私たちが主に従ったので、主が平和を与えていてくださるからだ。城壁で囲まれ、やぐら、門、かんぬきを備えた要塞の町を築こう。」そしてユダの民はこの計画を見事に実現しました。 8 アサ王の率いるユダ軍には、盾と槍で武装した三十万の屈強な兵士がおり、ベニヤミン軍には大盾と弓で武装した二十八万を数える兵士がいました。両軍とも十分に訓練された勇士ばかりでした。
9-10 ところがその後、ゼラフ将軍に率いられた百万ものエチオピヤの大軍が、三百台の戦車とともに、ツェファテの谷にあるマレシャの町にまで進攻して来ました。アサ王は、マレシャの町で迎え撃とうと軍隊を出動させました。 11 王は主に叫び、祈りました。「ああ、主よ、私たちを救えるのはあなただけです。私たちはこの大軍を前にして、あまりにも無力です。主よ、どうかお助けください! あなただけに頼り、主の御名によって、この大軍に向かいます。ただの人間にあなたを負かすようなことはさせないでください。」
12 それで主がエチオピヤ軍を打ち負かしたので、エチオピヤ人は逃げ、アサ王とユダの軍勢は勝利を収めました。 13 ユダ軍は敗走する敵をゲラルまで追撃し、それによって敵は全滅し、生き残った者は一人もいませんでした。主とその軍勢が、彼らを滅ぼしたからです。ユダ軍は山のような戦利品を持ち帰りました。 14 勢いをかって、ユダ軍がゲラル周辺のすべての町を攻めると、主からもたらされる恐れが住民を襲いました。そこで彼らは、これらの町からも、さらに大量の戦利品を奪い取りました。 15 町を略奪しただけでなく、家畜の天幕も壊して、多くの羊やらくだを奪い、エルサレムに凱旋しました。
偶像を取り除くアサ王
15 その時、神の霊がオデデの子アザルヤに臨みました。 2 アザルヤは、戦場から帰ったばかりのアサ王に会い、次のように言いました。「アサ王様、ならびにユダとベニヤミンの兵士たちも、私の申し上げることを聞いてください。あなたがたが主とともにいる限り、主もあなたがたとともにおられます。もしあなたがたが主を求めるなら、主はあなたがたにご自分を示してくださいます。しかし、もし主を捨てるようなことがあれば、主もあなたがたを捨てます。 3 これまで長い間、イスラエルの民はまことの神様を礼拝しませんでした。民を正しく導く、本物の祭司がいませんでした。それで、神様の教えも知らずに生活してきたのです。 4 それでも、悩みにぶつかって、イスラエルの神、主に立ち返り、主を探し求めたとき、主はいつも助けてくださいました。 5 神様に背いていたときには、平和がなく、八方ふさがりで、犯罪はここかしこで行われていました。 6 外敵との戦いに加えて、内戦も起こりました。神様が、ありとあらゆる苦しみをもって災いを下されたからです。 7 しかし、ユダの方々、正しい行いに励んでください。気を落としてはなりません。必ず報いがあります。」
8 アサ王はこの預言者アザルヤのことばを聞くと、勇気を奮い起こして、ユダとベニヤミンの地、また占領下のエフライムの山地にある町々から、すべての偶像を取り除きました。そして、神殿の正面にある主の祭壇を築き直しました。 9 アサ王は、ユダとベニヤミンの全住民および、主が王とともにおられるのを見てイスラエルの各地――エフライム、マナセ、シメオン――から移住して来た人々を召集しました。 10 アサ王の第十五年の第三の月に、人々はみなエルサレムに集まり、 11 戦利品の一部である牛七百頭と羊七千頭をいけにえとして主にささげました。 12 そして彼らは、父祖の神、主だけを礼拝するという契約を結び、 13 違反者はだれでも、老若男女の別なく殺されるということに同意したのです。 14 ラッパと角笛が響く中、大声で神への忠誠を誓いました。 15 こうして、ユダの人々はこの誓いを喜び祝いました。心を尽くして誓いを立て、他のすべてにまさって主を慕い求め、主が彼らにご自分を示したからです。主はユダの国のすみずみにまで平和をもたらしました。
16 アサ王は、母マアカでさえ、アシェラ像を造ったという理由で王母の位から退けました。彼はその像を切り倒し、粉々にしたうえでキデロン川で焼き捨てました。 17 イスラエル全土から完全に偶像の宮が取り除かれたわけではありませんが、ユダとベニヤミンの地においては、アサ王の心は、生涯を通じて神の前に完全だったといえます。 18 王は、彼と彼の父が主にささげた金銀の鉢を神殿に運び入れました。 19 こうして、アサ王の第三十五年まで、戦争は起きませんでした。
アサ王の晩年
16 アサ王の第三十六年に、イスラエルの王バシャが戦いをしかけて来て、ユダに通じる道を押さえるためにラマに要塞を築きました。 2 これを知ったアサ王は、神殿と王宮から金銀を持ち出し、ダマスコにいるシリヤ(アラム)の王ベン・ハダデに送り届けて、こう頼みました。 3 「あなたのお父上と私の父との間で結んだ安全保障条約(軍事同盟)を結び直しましょう。わずかばかりの品ですが、どうぞお受け取りください。イスラエルの王バシャとの同盟を破棄し、彼が私に手出しできないようにしていただきたいのです。」
4 ベン・ハダデはアサ王の要請を受け入れ、シリヤの軍を動員してイスラエルを攻めました。シリヤ軍はイヨン、ダン、アベル・マイムの町々、またナフタリにある物資の補給基地を占領しました。 5 そのことを知ったバシャ王は、すぐにラマの工事を中止し、ユダを攻撃する計画をあきらめました。 6 アサ王とユダの人々はラマに急行し、建築用の石材や木材を持ち帰ったうえ、それを使ってゲバとミツパを建てました。
7 その時、預言者ハナニがアサ王のもとに来て、彼に言いました。「あなたはあなたの神、主に頼まないで、シリヤの王に頼みました。そのため、シリヤの軍勢をむざむざ逃したのです。 8 あのエチオピヤ人とリビヤ人の大軍が、戦車と騎兵を率いて攻めて来た時、どんなことが起こったか、お忘れではないでしょう。あなたがひたすら主により頼んだので、主は彼らをことごとくあなたの手に渡してくださったではありませんか。 9 主はその御目で全地を見渡し、心を完全にご自分に向けている人々を探し求めておられます。そのような人々を助けるために、大きな御力を現してくださるのです。あなたはなんと愚かなことをなさったのでしょう。これから、戦いの渦に巻き込まれることでしょう。」
10 すると、これを聞いた王は真っ赤になって怒り、預言者を投獄しました。またこの時、王は多くの民を抑圧しました。
11 アサ王のその他の業績は、『イスラエルとユダ諸王の年代記』に載っています。 12 その第三十九年、王は両足が重い病気にかかりました。しかし、その中で主を求めるどころか、医者を頼みとしたのです。 13-14 王はその治世の第四十一年に死に、エルサレムに用意してあった墓に葬られました。その遺体は高価な香油や香料をしみ込ませた寝台に横たえられ、人々は彼の埋葬のためにたくさんの香をたきました。
ユダの王ヨシャパテ
17 アサの子ヨシャパテが代わってユダの王となり、イスラエルと戦う準備を始めました。 2 彼は、ユダの要塞化されたすべての町々をはじめ、国中のさまざまな他の場所、父アサ王が占領したエフライムの町々に守備隊を置きました。 3 ヨシャパテは、彼の父祖のかつての正しい生き方にならって偶像を拝まなかったので、主は彼とともにいました。 4 イスラエルの人々とは反対に、その父の神の教えどおりに生活したので、 5 主は、ユダの王としてのヨシャパテの地位を確固たるものにしました。すべてのユダの人々が納税に協力したので、彼は人気が高まったばかりか、財産も増えました。 6 王は高台の異教の祭壇を壊し、アシェラ像を取り除くなど、大胆に主の道を歩みました。
7-9 その治世の第三年に、彼は国中に宗教教育を広める計画を実行に移しました。ベン・ハイル、オバデヤ、ゼカリヤ、ネタヌエル、ミカヤをはじめ政府の高官たちを、教師としてユダのすべての町々に派遣し、これにレビ人のシェマヤ、ネタヌヤ、ゼバデヤ、アサエル、シェミラモテ、ヨナタン、アドニヤ、トビヤ、トブ・アドニヤも同行しました。また祭司からは、エリシャマとヨラムも同行しました。彼らは、『主の律法の書』の写しを持ってユダのすべての町々を巡り、人々に聖書を教えました。
10 その結果、回りのすべての国々が主を恐れるようになったので、ヨシャパテ王に戦いをしかける国は一つもありませんでした。 11 ペリシテ人さえも贈り物と貢ぎ物を納め、アラビヤ人は雄羊七千七百頭、雄やぎ七千七百頭を献上しました。 12 こうして、ヨシャパテ王はますます勢力を増し、国中に要塞の町や補給基地の町を建てました。
13 公共事業を拡大し、首都エルサレムには、強力な軍隊を駐屯させました。 14-15 三十万のユダ軍がアデナ将軍に率いられ、次の指揮官ヨハナンの下には二十八万の兵がいました。 16 第三の指揮官であるジクリの子アマスヤは、とても信仰のあつい人で、二十万の兵を率いていました。 17 ベニヤミンの部族からは、偉大な将軍エルヤダの率いる、弓と盾で武装した二十万の兵が加わりました。 18 エルヤダに続く指揮官はエホザバデで、その下に十八万の兵がいました。 19 以上は、ユダ全土の要塞化された町々に配置した軍隊とは別に、王がエルサレムに駐屯させていた軍隊です。
ミカヤの預言とアハブの死
18 財産が増え、評判のよいヨシャパテ王でしたが、イスラエルの王アハブの娘を息子の嫁に迎え、アハブと縁を結びました。 2 数年して彼がサマリヤにアハブを訪ねると、アハブ王は大宴会を開き、たくさんの羊や牛を料理してふるまいました。そのあとでアハブはヨシャパテに、ラモテ・ギルアデでの対シリヤ攻撃に加わらないかと持ちかけました。
3-5 ヨシャパテ王は答えました。「よろしいですとも。どこまでも、あなたについて行きますよ。わが軍はあなたの指揮下にあるようなものです。それにしても、まず主に伺いを立ててみようではありませんか。」そこでアハブ王は、おかかえの異教の預言者四百人を集め、「ラモテ・ギルアデへ攻め上るべきだろうか、それとも、やめるべきだろうか」と尋ねました。「行きなさい。勝利は間違いありません。」と、彼らは口々に答えました。
6-7 しかし、ヨシャパテは満足しませんでした。「ここには、まことの主の預言者はいないのですか。主の預言者にも、同じ質問をしてみたいものです。」アハブは答えました。「一人だけいます。あまり好きになれない男ですが。イムラの子でミカヤといいますが、いつも悪いことばかり預言するのです。」「ま、そんなことは言わず、彼の言うことも聞いてみましょう」とヨシャパテは言いました。 8 そこで、イスラエルの王は側近の一人を呼び、「急いで、イムラの子ミカヤを呼んで来るように」と命じました。
9 王服をまとった二人の王が、威儀を正してサマリヤの門の入口にある広場の玉座に着くと、その前で、「預言者」たちが次々に預言しました。 10 その一人、ケナアナの子ゼデキヤは、作ってきた鉄の角を取り出し、「主のお告げです。あなたはこれらの角でシリヤを突き、せん滅させます」と預言しました。 11 ほかの預言者たちもみな、同じように預言しました。「さあ、ラモテ・ギルアデに攻め上りなさい。勝利は間違いありません。」
12 ミカヤを呼びに行った使いの者は、今起こっていることを告げ、すべての預言者たちが、「この戦争は王の勝利に終わる」と預言したことをミカヤに話しました。使いの者は、思いきって彼に言いました。「あなたも、ほかの預言者たちに合わせて、王様のお気に召すようなことを話してくれませんか。」
13 ミカヤはきっぱり答えました。「主にかけて誓います。私は神様がおっしゃることを、そのまま話します。」
14 ミカヤが王の前に出ると、王はさっそく尋ねました。「ミカヤ。ラモテ・ギルアデに攻め上るべきだろうか、それとも、やめるべきだろうか。」
「攻め上るがよろしい! 大勝利は間違いありません。」
15 すると、王は語気を強めて言いました。「いったい、何度、主がお語りになること以外はしゃべるな、と私に言わせるつもりか。」
16 「私は幻の中で、すべてのイスラエル人が、まるで羊飼いのいない羊のように、山々に散らされているのを見ました。その時、主は、『彼らの主人は殺されたから、彼らを家に連れ帰れ』と仰せになったのです。」
17 アハブ王は、ヨシャパテ王に吐き捨てるように言いました。「お話ししたとおりでしょう。いつも、彼は私に悪いことしか預言しないのです。」
18 ミカヤはことばを続けました。「主のお告げはまだあります。私は、主が御使いの大軍に囲まれて御座に着いておられるのを見ました。 19-20 その時、主はおっしゃったのです。『だれか、アハブ王をラモテ・ギルアデでの戦いに誘い出し、戦死させるようにする者はいないのか。』いろいろな提案が出されましたが、ある霊が進み出て、『私にやらせてください』と言いました。主が、『どういうふうにやるのか』とお尋ねになると、 21 彼は答えました。『王のすべての預言者にうその預言をさせます。』主は、『それはよい。そのようにせよ』とおっしゃいました。 22 それで、ごらんのとおり、あなたの預言者はうその預言をしたのです。実際は、正反対のことを主は告げておられるのです。」
23 すると、ケナアナの子ゼデキヤは、つかつかとミカヤに歩み寄って彼の頬をなぐり、「この大うそつきめ! いつ、主の霊が私を離れて、おまえに乗り移ったというのか」と言いました。
24 「あなたが奥の間に隠れるようになった時、ほんとうのことがわかります。」
25 イスラエルの王は、こう言いました。「この男を捕らえて、市長アモンとわが子ヨアシュに渡し、 26 『この男を牢に入れ、戦いから無事に戻って来るまで、わずかなパンと水をあてがっておけ、と王が命じた』と言いなさい。」
27 ミカヤは答えました。「もし、あなたが無事お戻りになるようなことがあるなら、主は私を通して語られならなかったことになります。」それから、回りの人々に向かって、「私が今言ったことをよく覚えておきなさい」と言いました。
28 こうして、イスラエルの王とユダの王は、それぞれの軍を率いてラモテ・ギルアデに攻め上りました。 29 イスラエルの王はヨシャパテ王に、「私はだれにも気づかれないように変装しますが、あなたはちゃんと王服を着ていてください」と言いました。二人は、そのとおりに出陣しました。 30 一方、シリヤの王は、このような指示を戦車隊に与えていました。「目標はイスラエルの王ただ一人だ! ほかのだれにも手を出すな!」
31 シリヤ軍の戦車隊は、王服を着たユダの王ヨシャパテを見つけると、彼こそ目あてのイスラエルの王に違いないと思って襲いかかりました。ヨシャパテは大声で主に助けを求めました。それで主がシリヤ軍の戦車隊に人違いだと気づかせたので、彼らはヨシャパテ王から離れました。 32 イスラエルの王でないとわかったので、すぐに追うことをやめたのです。 33 ところが、シリヤ軍の兵士の一人が、何気なくイスラエル軍に矢を放つと、それがなんとイスラエルの王の胸当てと草摺りとの間を射抜いたのです。王は戦車の御者に、苦しい息づかいの中で言いました。「ここから抜け出させてくれ。深手を負ってしまった。」 34 その日、戦闘はますます激しさを増しました。アハブ王は戦車の背に寄りかかったままシリヤと戦いましたが、日が西の空に沈むころ、息を引き取りました。
エルサレムでのヨシャパテ
19 ユダの王ヨシャパテが無事自分の家に戻ると、 2 ハナニの子で預言者エフーが出向いて来て、言いました。「悪者を助けていいのですか。主を憎む者を愛すべきなのでしょうか。あなたがそのようになさったので、主の怒りが下ります。 3 しかし、あなたには幾つかの良い点があります。この地からアシェラ像を一掃して、神に忠誠を尽くそうと努力してきたことがそれです。」
4 その後、ヨシャパテは二度とイスラエルを訪問することもなく、エルサレムにおとなしくとどまっていました。のちに、王はもう一度、ベエル・シェバからエフライムの山地まで巡回し、その地の人々に父祖の神を礼拝するよう指導しました。 5 国中の大きな町には裁判官を置き、 6 こう訓示しました。「あなたがたを任命したのは、私ではなく神である。だから、自分の行動に注意しなさい。神が一人一人のそばに立って、あなたがたの前に持ち出されるすべての訴訟に、正しい裁きができるよう手を貸してくださる。 7 神の御旨に反するような判決を下さないよう、注意しなさい。神のもとでの裁きには、不正も不公平も収賄もあってはならないからである。」
8 王はエルサレムにも裁判所を設けて、レビ人、祭司、氏族長から裁判官を任命し、 9 彼らにも訓戒を与えました。「あなたがたは、いつも神を恐れ、誠意を込めて行動しなければならない。 10 各地の裁判官から、殺人事件や神の教えへの違反などについて訴訟が持ち込まれたら、事実を確かめ、彼らが正しく裁けるよう助けてやりなさい。神の怒りが、あなたがたにも、彼らにも下ることがないためだ。このようにすれば、あなたがたの責任を果たしたことになる。」
11 それから王は宗教上の問題を扱う裁判の最高責任者として大祭司アマルヤを任命しました。また、民事を扱う裁判の最高責任者として、イシュマエルの子でユダ族の長ゼバデヤを任命し、レビ人を補佐役にあてました。王は、最後にこう言いました。「それぞれの職務に対し、恐れることなく誠心誠意当たりなさい。どうか、神があなたがたを用いて、正しい者の味方としてくださるように。」
ヨシャパテの勝利
20 そののち、モアブ人とアモン人、それにメウニム人の王の率いる連合軍が、ヨシャパテとユダの民に宣戦布告しました。 2 ヨシャパテに届いた情報は、「大軍が、死海の向こうのシリヤから押し寄せて来ます。もうハツァツォン・タマル、つまりエン・ゲディまで来ています」というものでした。 3 あわてふためいた王は、主の助けを仰ぐよりほかないと判断し、全国民が神の前に悔い改め、断食して祈りに打ち込むよう命じました。 4 人々は各地からエルサレムに集まり、心を一つにして主に助けを求めました。
5 ヨシャパテは、神殿の新しい庭に集まった人々の中に立って祈りました。 6 「私たちの父祖の神、主よ。天におられ、地上のすべての王国を支配しておられる神よ。あなたの測り知れない力に、だれも立ち向かうことはできません。 7 私たちの神よ、あなたの民がこの地に入った時、あなたはこの地に住んでいた異教徒を追い出し、この地を永久に、あなたの友アブラハムの子孫のものとされたではありませんか。 8 あなたの民はここに根を下ろし、あなたのためにこの神殿を建てました。 9 戦争、疫病、ききんなどの災いに会ったなら、あなたのおられるこの神殿、つまりあなたの御前に立って祈れば、祈りは聞かれ、あなたは私たちを救ってくださると信じています。
10 今、アモンとモアブ、セイル山の人々がやっていることをごらんください。あなたは、先祖がエジプトを出て来た時、彼らの国に侵入するのをお許しになりませんでした。それで私たちは、彼らの国を避けて通り、彼らを滅ぼさないでおいたのです。 11 ところが今、彼らは何をしようとしているでしょうか。あなたが私たちに下さった地から、私たちを追い出そうとして攻め寄せて来るのです。 12 神よ、彼らの来襲をとどめてください。私たちには、このような大軍から身を守るすべなどありません。どうしたらよいのか見当もつきません。ただあなたに助けを求めるばかりです。」
13 ユダの各地から集まった人々は、妻子や幼児たちといっしょに主の前に立っていました。
14 その時、主の霊が、そこに立っていたレビ人ヤハジエルに臨んだのです。彼はアサフの子孫の一人で、マタヌヤの子エイエルの子ベナヤの子ゼカリヤの子でした。 15 ヤハジエルは大声で語りだしました。「ユダとエルサレムのすべての人々、またヨシャパテ王よ、よく聞きなさい! 主はこう言われます。『恐れてはならない。この大軍を見ておじけてはならない。この戦いはあなたがたの戦いではなく、わたしの戦いだ。 16 明日、エルエルの荒野に通じる谷の出口で、ツィツの坂を上って来る敵と会うから、こちらから攻撃をしかけよ。 17 あなたがたは戦わなくてよい。持ち場を守り、黙って、わたしのすばらしい救いを見よ。ユダとエルサレムの人々よ、恐れたり、意気消沈したりしてはならない。わたしがついている。明日、出陣するのだ。』」
18 ヨシャパテは地にひれ伏しました。ユダのすべての民とエルサレムの住民も、同じように主を礼拝しました。 19 それから、ケハテ氏族とコラ氏族のレビ人が立ち上がり、力強く高らかに主を賛美しました。
20 翌朝早く、ユダ軍はテコアの荒野へ兵を進めました。途中、ヨシャパテは立ち止まって指示を与えました。「私の言うことを聞き、主を信じなさい。そうすれば、勝利は間違いない! 預言者のことばを信じなさい。そうすれば、すべてはうまくいく。」
21 それから民の指導者と相談して、聖歌隊を編成しました。聖歌隊は聖なる衣服をまとい、行軍の先頭を進みながら、「主のいつくしみは、とこしえまで」と歌って主をたたえ、主に感謝をささげました。 22 彼らが賛美をし始めた時、主は、アモン人、モアブ人、セイル山の人々の間で同士討ちを引き起こさせました。それで彼らは、互いに殺し合うことになったのです。 23 まずアモン人とモアブ人がセイル山から来た軍を襲い、一人残らず殺しました。それが終わると、今度はアモン人とモアブ人がぶつかり合ったのです。 24 それで、ユダ軍が荒野を見下ろす物見の塔に着いた時には、見渡す限り、あたり一面に死体が転がっていました。逃げ延びた敵兵は一人もいませんでした。 25 ヨシャパテ王とユダの民は、遺体から金、武具、宝石などをはぎ取りました。その数があまりにも多かったので、全部運ぶのに三日もかかるほどでした。 26 四日目に彼らは、今でもベラカ(祝福)の谷と呼ばれている谷に集まり、心から主をたたえました。 27 それから王を先頭に、彼らは意気揚々とエルサレムに凱旋しました。主が信じられないような方法で救い出してくれたので、彼らの心は喜びでいっぱいでした。 28 彼らは琴、竪琴、ラッパの奏楽とともにエルサレムに入城し、神殿に入りました。 29 そして以前にもあったように、近隣の国々は、主がイスラエルの敵と戦ったと聞いて、神への恐れに包まれました。 30 こうして、神が王に安息を与えたので、ヨシャパテの王国は安泰を保ちました。
ヨシャパテの治世の終焉
31 ヨシャパテ王の生涯を略述すると、三十五歳でユダの王となり、二十五年間エルサレムで統治。母はシルヒの娘のアズバ。 32 父アサ王のように主の前に良い王で、いつも主に従おうとしました。 33 しかし、高台にある偶像の宮を取り壊すことだけはしなかったので、人々に、父祖の神に従うことを決心させるまでには至りませんでした。
34 ヨシャパテ王のその他の業績は、『イスラエル諸王の年代記』に挿入されている、ハナニの子エフーの書いた言行録に記されています。
35 しかし王は、晩年になって、悪名高いイスラエルの王アハズヤと同盟を結びました。 36 彼らは、タルシシュ行きの船団をエツヨン・ゲベルでつくりました。 37 その時、マレシャ出身のドダワの子エリエゼルがヨシャパテに対して預言し、「あなたがアハズヤと同盟を結んだので、主はあなたの計画を壊します」と言いました。それで、船は難破し、タルシシュへ行くことはできませんでした。
ユダの王ヨラム
21 ヨシャパテ王は死んで、エルサレムの王室の墓に葬られ、その子ヨラムが新しくユダの王となりました。 2 ヨラムの兄弟には、アザルヤ、エヒエル、ゼカリヤ、アザルヤ、ミカエル、シェファテヤがいました。 3-4 彼らの父ヨシャパテは、その一人一人に多くの金品、また、ユダの要塞化された幾つかの町々も与えていました。ヨラムは長男だったので、王国と王権を与えました。王としての地位が確立すると、ヨラムは兄弟全員と多くの指導者を殺しました。
5 ヨラムは三十二歳で王となり、八年間エルサレムで治めました。 6 彼はイスラエルを支配した王たち、わけても、アハブ王にさえ引けを取らないほど、主の前に悪を行いました。あの邪悪なアハブ王の娘と結婚していたので、一生の間、とどまることなく悪を働きました。 7 それにもかかわらず、主はダビデの家を見限るようなことはしませんでした。ダビデに、彼の子孫はいつまでも王座につくと約束していたからです。
8 そのころ、エドムの王が反逆して、ユダからの独立を宣言しました。 9 ヨラムは、戦車隊とともに全軍を率いて夜襲をかけ、ほとんど制圧するところでした。 10 しかしエドムは、現在までユダの支配を免れることに成功しています。さらに、リブナもまた反逆しました。それもこれも、ヨラム王が父祖の神、主を捨てていたからです。 11 そのうえ、ヨラムはユダの山々に偶像の宮を建て、エルサレムの住民を偶像礼拝に誘ったばかりか、人々に偶像礼拝を強要さえしたのです。
12 その時、預言者エリヤは王に、次のような手紙を送りました。「あなたの先祖ダビデの神、主は言われます。『あなたは、父ヨシャパテやアサ王の手本にならわず、 13 イスラエルのほかの王にならって悪の道を進み、アハブ王と同じように、エルサレムとユダの民に偶像礼拝を行わせた。また、あなたよりも善良だった兄弟を殺したので、 14 今こそわたしは、あなたの国を大災害で滅ぼそう。あなたはもちろん、妻子までも打たれ、全財産は散らされる。 15 あなたは腸の病気を患い、はらわたが飛び出る。』」
16 主は、エチオピヤ人の近くに住むペリシテ人とアラビヤ人を奮い立たせ、ヨラム王を攻撃するよう仕向けました。 17 彼らはユダを目指して進撃し、国境を越え、ヨラム王の妻子を含めて、王宮にあるめぼしいものをみな奪い去りました。ようやくのことで、王の末子エホアハズだけが難を逃れました。
18 こののち、主はヨラム王を打ったので、王は腸を患う不治の病にかかりました。 19 二年目の終わりになると、腸が外に飛び出し、激しい苦しみに襲われながら彼は死にました。その葬儀はひどく簡素なものでした。
20 ヨラムは三十二歳で王となり、八年間エルサレムで治めて死にました。だれもその死を悼みませんでした。彼はエルサレムに葬られましたが、王室の墓地ではありませんでした。
ユダの王アハズヤ
22 エルサレムの人々は、ヨラムの末子アハズヤ(別名エホアハズ)を新しく王に選びました。アラビヤ(アラブ)人の略奪部隊が、年長の息子たちを殺してしまったからです。 2 アハズヤは二十二歳で王となり、一年間エルサレムで治めました。母親はオムリの孫娘のアタルヤでした。 3 彼もまた、母にそそのかされてアハブ王の悪い例にならいました。 4 父ヨラムの死後、アハブ家の者たちが助言者となったので、彼はアハブ王に引けを取らないほど、主の前に悪を行う王になりました。
5 アハブ家の悪い助言者に操られて、アハズヤは、イスラエルの王アハブの子ヨラムと同盟を結びました。その時、ヨラム王はシリヤの王ハザエルとラモテ・ギルアデで戦っていたので、アハズヤは軍を率いて援軍に駆けつけました。イスラエルの王ヨラムは負傷し、 6 治療のため、イズレエルに帰って来ました。ユダの王アハズヤは、彼を見舞いにイズレエルに行きました。 7 ところが、このことが彼のいのち取りになりました。神は、ヨラムと同盟を結んだアハズヤに罰を下そうと決めていたのです。ヨラムを見舞ったアハズヤは、彼と手を組んで、ニムシの子エフーとの戦いに出かけました。このエフーこそ、アハブ家を倒すため、神が立てた人物だったのです。
8 エフーはアハブ家の者を追いかけ、手あたりしだいに殺していましたが、ユダの高官とアハズヤの甥たちとを見つけたので、彼らも殺しました。 9 エフーと家臣たちは、なおアハズヤを捜し回り、ついにサマリヤの町に隠れていた王を見つけ出したのです。王はエフーの前に引き出されて殺されましたが、熱心に主に仕えたあのヨシャパテ王の孫だということで、王にふさわしく葬られました。
アタルヤと祭司エホヤダ
10 わが子アハズヤの死の知らせを受けた王母アタルヤは、孫たちを殺してしまったので、跡を継いで王となるべき子はヨアシュのほかにいませんでした。 11 ヨアシュは、王の妹である叔母エホシェバに助け出され、宮殿の物置小屋に隠されていたのです。彼女はヨラム王の娘で、祭司エホヤダの妻でした。 12 ヨアシュは、アタルヤが女王であった六年間、叔母や叔父、乳母たちに守られて、ずっと神殿にかくまわれていました。
23 女王アタルヤの第七年に、祭司エホヤダは勇気を奮い起こして、軍の隊長数人と密約を結びました。相手は、エロハムの子アザルヤ、ヨハナンの子イシュマエル、オベデの子アザルヤ、アダヤの子マアセヤ、ジクリの子エリシャファテです。 2-3 彼らはこっそり国中を回って、レビ人や氏族長たちにエホヤダの計画を打ち明け、彼らをエルサレムに呼び集めました。集まった者たちは、神殿にかくまわれていた若い王に忠誠を誓いました。エホヤダは語りました。「ダビデ王の子孫が私たちの王となるという主のお約束どおり、王の子が王となる時がついにきました。 4 次のように手はずを整えましょう。祭司とレビ人の三分の一は、安息日に勤務する護衛として入口にとどまってください。 5-6 他の三分の一は王宮に入り、残りの三分の一は礎の門のところにいてください。そのほかの者はみな、神の戒めに従って、神殿の外庭にいなければなりません。務めのある祭司とレビ人だけが、神殿に入ることができます。 7 レビ人の皆さんは、武器を手に、しっかり王を護衛してください。神殿に踏み込む無法者がいれば、殺してもかまいません。片時も王のそばを離れてはなりません。」
8 全員が指示されたとおりに配置につきました。リーダーはそれぞれ、安息日の勤務当番日に当たる三分の一の祭司と、週日の務めについていた三分の一の祭司を率いていました。祭司エホヤダが彼らを家に帰さずにおいたのです。 9 エホヤダは、隊長たちに、神殿に保管してあったダビデの槍と盾を支給しました。 10 完全武装した彼らは、神殿の正面の端から端までと、外庭にある祭壇の回りを囲みました。 11 それから、幼いヨアシュ王子を連れ出して王冠をかぶらせ、その手にモーセの律法の写しを渡し、彼が王であることを宣言したのです。エホヤダとその子たちが王に油を注いだ時、「王様、ばんざーい!」という叫びが、いっせいに起こりました。
12-13 一連の騒ぎと、王をたたえる声とを聞いた女王アタルヤは、何事が起こったのかと神殿に駆けつけました。見ると、王が入口の柱のところに立っており、そばには隊長たちが並び、吹奏隊が王を取り囲んでいました。各地から集まった人々は喜んでラッパを吹き鳴らし、合唱隊は、賛美を導く奏楽に合わせて歌っています。女王は衣服を引き裂いて、「謀反だ! 謀反だ!」と、気が違ったように叫びました。
14 祭司エホヤダは隊長たちに命じました。「この女を連れ出して、殺せ! 神殿の中ではだめだ。女を助けようとする者は、だれでも容赦なく殺すのだ」
15-17 群がっていた人々は、さっと道を開きました。結局、彼女は王宮の馬小屋で殺されました。
それからエホヤダは、彼と王と民とが主の民となるという厳粛な契約を結びました。民はこぞってバアルの神殿に向かい建物を壊し、祭壇を砕き、像を倒し、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺しました。
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