民数記 21-23
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アラデを滅ぼす
21 人々は、先の偵察隊の一行と同じ道を通り、アラデの近くに来ました。それを知ったカナン人アラデの王はイスラエル人を攻撃し、何人かを捕虜にしました。 2 そこでイスラエルの民は、「アラデの国を征服させてください。国中の町を必ず全滅させます」と主に誓願しました。 3 願いは聞かれ、彼らはカナン人と彼らの町を滅ぼしました。そこをホルマ〔「全滅」の意〕と呼ぶようになったのは、この時からです。
青銅の蛇
4 このあと彼らはホル山に帰り、そこから南へ行き、エドムの国をぐるりと回って、紅海へ通じる道に出ました。ところが、途中で我慢できなくなり、 5 また文句を言い始めたのです。不平不満はモーセに集中しました。「何の恨みがあって、われわれをエジプトから連れ出し、こんな荒野で飢え死にさせるのか。食べ物も飲み物もないではないか。あんなまずいマナは、もうたくさんだ。」
6 これに主は怒り、彼らを毒蛇にかませたので、多くの者が死にました。 7 人々は困り果ててモーセに泣きつきました。「赦してください。私たちが間違っていました。主とあなたのおっしゃるとおりにしていればよかったのです。お願いですから、毒蛇がいなくなるように主に祈ってください。」モーセは民のために祈りました。
8 主の答えはこうでした。「銅で毒蛇の複製を作り、竿の先に掲げなさい。かまれた者で、わたしの言うとおり、それを見上げる者は助けよう。」
9 モーセはさっそく蛇の複製を作り、竿の先につけました。かまれた者で、それを見上げた者は一人残らず治りました。
モアブへの旅
10 このあと一行はオボテに行き、そこで野営しました。 11 そこからさらに、モアブに近い荒野にあるイエ・ハアバリム、 12 ゼレデの谷へと進み、そこに野営しました。 13 それから、モアブとエモリとの国境沿いを流れるアルノン川の向こう岸に移りました。 14 アルノン川のことは、『主の戦いの書』(折々に作られたイスラエルの戦いの歌)に、ワヘブの町を通り、 15 モアブとエモリの国境を流れている、と記されています。
16 次に向かったのはベエル〔「井戸」の意〕です。そこは主がモーセに、「水を与えるから、みなを集めなさい」と命じた場所でした。 17-18 その時のことは、次のようなイスラエルの歌になっています。
「水よ、どんどんわき上がれ。
喜びの歌を歌おう。
おお、すばらしい井戸。
指導者たちが杖とシャベルで掘った井戸。」
一行はそこで荒野を離れ、マタナ、 19 ナハリエル、バモテを通って、 20 モアブ平原の谷まで行きました。そこはピスガ山のふもとで、山頂からは荒野がはるかに見渡せました。
シホン王とオグ王を打つ
21 イスラエルは、エモリ人の王シホンに使者を送りました。 22 「どうか、領内を通らせてください。国境を越えるまでは、決して街道からそれたりしません。畑を踏み荒らしたり、ぶどう園に入ったり、水を飲んだりもしません。」
23 しかし、王は承知しませんでした。それどころか軍を集め、わざわざ荒野に出て、ヤハツで戦いをしかけてきたのです。 24 ところが王は戦死し、勝ったのはイスラエル人のほうでした。結局、アルノン川から、北はヤボク川、東はアモンとの国境までを占領しました。アモンとの国境は地形が険しく、それ以上は進めなかったのです。
25-26 こうしてイスラエルはエモリ人の国を占領し、そこに住みつきました。首都だったヘシュボンもイスラエル人のものになりました。シホン王は以前にモアブを治めていた王と戦って勝ち、アルノン川までの全土を占領していたのです。 27-30 昔の詩人が歌っているとおりです。
「シホン王の都、ヘシュボンに来てみるがいい。
岩のように堅い都に。
王は炎のような勢いでモアブの町アルに攻め上り、
完全に滅ぼしてしまった。
アルノン川の高地にそびえるあのアルを。
気の毒なモアブ、ケモシュの神を拝む人たち。
とうとう最期が来たのだ。
息子は外国へ逃げ、
娘はエモリ人の王シホンに捕らえられた。
しかし、今やわれわれが彼らの子孫を滅ぼした。
ヘシュボンからディボンに至るまで、
メデバの近くのノファフまで。」
31-32 エモリ人の国にいる間に、モーセはヤゼルのあたりに偵察を送り込みました。よく調べてから攻めようとしたのです。そして、とうとう町々を占領し、エモリ人を追い出しました。
33 次の目標はバシャンの都でした。バシャンの王オグはこれに対抗し、エデレイに兵を集めました。 34 主はモーセを励ましました。「恐れるな。勝敗はもう決まっている。ヘシュボンでシホン王と戦ったように、オグ王と戦いなさい。」
35 そして、イスラエルは勝利を収めたのです。オグ王とその子らから部下に至るまですべて打ったので、バシャンもイスラエル人のものとなりました。
バラムを呼び寄せるバラク王
22 さて、イスラエルはモアブの平原に移り、ヨルダン川の東側、ちょうどエリコの町の反対側あたりに野営しました。
2-3 ツィポルの子でモアブの王バラクは、イスラエル人の数があまりにも多く、エモリ人がひどい目に会ったことを知ると、恐怖におびえました。国民もイスラエル人を恐れました。 4 ぐずぐずしてはいられません。そこで王はすぐ、近隣のミデヤン人の指導者たちに相談しました。「いったいどうしたらいいのだ。あの暴徒どもは、まるで牛が草を食い尽くすように回りの者を滅ぼしている。このままでは絶対に助からない。」
5-6 相談の結果、ベオルの子バラムを呼び寄せることになりました。彼は、ユーフラテス川に近い、王の故郷ペトルに住んでいます。「バラムが来れば何とかなる。」そう望みをかけて、王は使いを送りました。
使いの者は王のことづてをバラムに伝えました。「イスラエル人とかいう暴徒どもがエジプトからやって来て、国中が大騒ぎだ。何しろ彼らは、まるで世界中を征服しそうな勢いで手のつけようがない。それが今にもわが国に攻め込んで来そうなのだ。すぐ来て、彼らをのろってくれないだろうか。そうすれば難なく追い出すことができる。彼らは強すぎて、このままではとてもかなわない。おまえが祝福する者は祝福され、おまえがのろう者は必ず破滅するということだから、ぜひ頼みを聞いてくれないか。」
7 モアブとミデヤンの長老たちによる使いの一行は、進物を携え、急いでバラムに用件を伝えました。 8 するとバラムが、「今夜はここにお泊まりください。明日の朝、主がお示しになったことをお伝えしましょう」と言うので、彼らはそうすることにしました。
9 その晩、神がバラムに現れ、「その者たちはいったい何者だ」とお尋ねになりました。
10 「モアブの王バラクの使いの者でございます。 11 暴徒たちがエジプトから来て、国境に迫っているから、すぐ彼らをのろいに来てくれというのです。戦いに勝ちたがっているのです。」
12 「行ってはならない。頼みを聞いてその民をのろってはならない。わたしはイスラエルの民を祝福しているからだ。」
13 翌朝、バラムはバラクの使いの者たちに言いました。「申しわけありませんが、お帰りください。主は行ってはならないと言われました。」
14 長老たちは、すごすごと王のもとへ戻り、断られたことを伝えました。 15 しかし王はあきらめません。もう一度、より地位の高い者たちを、前よりも大ぜい送りました。 16-17 一行が持って行った親書には、こうありました。「ぜひともおいでください。おいでいただければ手厚くおもてなしし、お望みのものは何でも差し上げましょう。どうか、イスラエル人をのろいに来てください。」
18 バラムは承知しません。「たとえ金銀で飾り立てた宮殿を下さると言われても、私の神、主の命令には逆らえません。 19 しかし、この前とは別のお告げがあるかもしれませんから、今夜はここにお泊まりください。」
20 その夜、神はバラムに命じました。「彼らとともに行きなさい。だが、わたしが命じることだけをするのだ。」
バラムとろば
21 翌朝、バラムはろばに鞍をつけ、モアブの指導者たちと出かけました。 22-23 ところが、神はバラムの心に欲があることを怒り、途中で彼を殺してしまおうと主の使いを送ったのです。そうとは知らないバラムは、供の者二人と先を急いでいました。と、突然、バラムのろばの前に抜き身の剣を下げた主の使いが立ちはだかりました。驚いたろばは急に駆けだし、道ばたの畑に入り込んでしまいました。バラムはわけがわからず、あわててろばに鞭を当てて道に戻しました。 24 主の使いは、今度はぶどう園の石垣の間の道に立っていました。 25 その姿を見るなり、ろばはもがいて体を石垣に押しつけたので、バラムは足をはさまれてしまいました。怒ったバラムは、また鞭を当てました。 26 すると、主の使いが先に行って道幅の狭い所に立ちふさがったので、 27 ろばは道にうずくまってしまいました。バラムはかっとなって、ろばを杖で打ちました。
28 この時、急にろばが口をききました。主がそうなさったのです。「どうして私を三度もぶつのですか。」
29 「私をばかにしたからだ。剣があれば、切り殺してやるところだ。」
30 「でも、これまでに、私が一度でもこんなことをしたでしょうか。」
「いや、なかった。」
31 その時バラムの心の目が開き、剣を抜いて行く手に立ちはだかっている主の使いが見えました。バラムはびっくりし、その方の前にひれ伏しました。
32 「なぜ、ろばを三度も打ったのか。あなたが破滅の道を進んでいるので、止めに来てやったのに。 33 ろばはわたしを見て、三度ともしりごみした。そうでもしなかったら今ごろ、ろばは助かっても、あなたのいのちはなかった。」
34 「私が間違っていました。お赦しください。あなたがおいでになろうとは、気がつきませんでした。これ以上進むなと申されるなら、引き返します。」
35 「いや、このまま行きなさい。ただ、わたしが命じることだけを言うのだ。」
そこでバラムは一行と旅を続けました。
バラムを迎えるバラク王
36 バラク王は、バラムが途中まで来ていると聞いて待ちきれず、わざわざ国境のアルノン川まで迎えに出ました。 37 「なぜ、こんなに遅くなったのか。絶対に悪いようにはしないと約束したのに、信じてくれなかったのか。」
38 「王様、おおせに従い、参るには参りましたが、残念ながら、神が命じられることしか申し上げられません。」
39 バラムは、王といっしょにキルヤテ・フツォテに行きました。 40 王はそこで牛と羊をほふり、バラムや使いの者たちにそれを与えました。 41 翌朝、王はバラムをバモテ・バアル山の頂上に連れて行きました。そこから見下ろすと、多くのイスラエル人が集まっているのが見えました。しかも、それは彼らの一部でした。
神のことばを伝えるバラム
23 バラムはバラク王に言いました。「ここに祭壇を七つ築き、若い雄牛と若い雄羊を七頭ずつ用意してください。」
2 王は指示どおり、雄牛と雄羊を一頭ずつ、それぞれの祭壇の上でいけにえとしてささげました。
3-4 「ここでお待ちください。主が何と言われるか聞いてまいりましょう。」こう言うと、バラムは木も生えていない山の頂上に登って行きました。そこに神が現れたので、バラムは言いました。「七つの祭壇を用意し、それぞれに若い雄牛と雄羊を一頭ずつ、いけにえとしておささげしました。」 5 主は王に伝えることを教えました。
6 戻ってみると、王はモアブの指導者全員とともに、焼き尽くすいけにえのそばに立っていました。 7-10 バラムは言いました。
「王よ、あなたは私を東のアラムの国から呼び寄せ、
『イスラエル人どもをのろい、滅ぼしてくれ』と
お頼みになりました。
ああ、しかし、神がのろわないのに、
どうして私がのろえましょう。
神が滅ぼすと言われないのに、
どうして私が滅びると言えましょう。
山の頂から眺め、丘の上からよく見ると、
イスラエル人はどの国民とも違います。
あんな国民は見たこともありません。
まるで海辺の砂のように多く、とても数えきれません。
死ぬ時は、私もイスラエル人のように
幸せに死にたいものです。」
11 王はバラムに言いました。「なんだと! 敵をのろってくれとは頼んだが、祝福しろと言った覚えはない。」
12 「何と言われましても、神様が言えとおっしゃること以外は申し上げられません。」
13 「では、やつらがほんの一部しか見えないこちらに来い。そのくらいの数なら、のろってもかまわないだろう。」
14 王はバラムをピスガ山の頂上のセデ・ツォフィムの原に連れて行き、そこに祭壇を七つ築き、それぞれに若い雄牛と雄羊を一頭ずついけにえとしてささげました。
15 バラムは王に言いました。「主にお会いして来る間、祭壇のそばに立っていてください。」 16 主はバラムに現れ、何を言ったらよいかを教えました。 17 バラムはさっそく王や指導者たちのもとに戻りました。そばには、焼き尽くすいけにえがありました。
王はまどろっこしくなり、じりじりしながら尋ねました。「それで、主は何と言われたのだ?」
18-24 バラムは、答えました。
「よろしいですか、ツィポル殿のご子息である王よ。
お聞きもらさないように、よくお聞きください。
神は人間と違って、うそなどおつきになりません。
神が約束を実行なさらなかったことがあるでしょうか。
その神が、『祝福しなさい』とお命じになったのです。
神の祝福を変えることはできません。
イスラエル人に悪いところはないのだから、
災いに会うこともありません。
神が彼らとともにおられ、
イスラエル人は彼らの王をたたえています。
神は彼らをエジプトから連れ出しました。
神はイスラエルのために野牛のように戦います。
イスラエルには、のろいも魔術も通じません。
『イスラエルの神は、なんと不思議なことをなさるのだ』と、だれもが言うでしょう。
彼らはライオンのように立ち上がり、
獲物を食い尽くし、
その血を吸い尽くすまで休もうとはしません。」
25 「ええい、もうやめないか! のろわないなら、せめて祝福するのだけはやめてくれ!」王はこらえきれずに叫びました。
26 「王様、私は主がお告げになったことだけをお伝えすると、最初に申し上げたではありませんか。」
27 「それなら、また別の場所へ連れて行ってやろう。そこからなら、やつらをのろってもいいと、神は言われるかもしれない。」
28 王はバラムを、荒野を見下ろすペオル山の頂上に連れて行きました。 29 バラムが、「祭壇を七つ築き、若い雄牛と雄羊を七頭ずついけにえにしてください」と頼むと、 30 王は言われたとおり、それぞれの祭壇に一頭ずつ、雄牛と雄羊をささげました。
マルコの福音書 6
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6 まもなくイエスはその地方を去り、弟子たちを連れて故郷の町ナザレに帰られました。 2-3 次の安息日に、イエスが会堂に出かけて話をされると、聴衆はその教えに驚きました。イエスのことを、自分たちと同じ、ただの田舎者だと思っていたからです。
「あれのどこがおれたちと違うというんだ。ただの大工のせがれじゃないか。母親はマリヤだし、ヤコブやヨセやユダやシモンは兄弟だ。妹たちだって、われわれとこの町に住んでいるじゃないか。」こうして、町の人たちはイエスに背を向けました。 4 そこで、イエスは言われました。「預言者(神に託されたことばを語る人)はどこででも尊敬されます。ただ、自分の故郷、親族、家族の中ではそうではありません。」 5 そのため、わずかの病人に手を置いて治されただけで、そこでは何一つ力あるわざを行うことができませんでした。 6 イエスは、ナザレの人たちの不信仰に驚かれました。
このことがあってから後、イエスは近辺の村々を巡り歩いて、教えられました。 7 また、十二人の弟子を呼び、悪霊を追い出す力を与えると、二人ずつ組にして送り出されました。 8-9 そして、携帯品は杖だけにし、食料も旅行袋も、お金も、はき替えのくつも、着替えの下着も持って行ってはいけないと注意されました。 10 また、言われました。「どこの村ででも、一軒の家に泊まるようにしなさい。あっちこっち家々を渡り歩いてはいけません。 11 もしその村が、あなたがたを門前払いにし、あなたがたのことばに耳を貸そうともしないなら、そこから出る時、足のちりを払い落としなさい。それは、その村を滅びるに任せたというしるしです。」
12 こうして弟子たちは出て行き、出会ったすべての人に、悔い改めて神に立ち返るようにと教え、 13 多くの悪霊を追い出し、オリーブ油を塗って大ぜいの病人を治しました。
バプテスマのヨハネの死
14 イエスの奇跡は至る所で話題になったので、まもなくヘロデ王の耳にも入りました。王は、バプテスマのヨハネが生き返ったのだと考えました。そして人々も、「だからこそ、イエスにはあんな奇跡ができるのだ」とうわさしました。 15 中には、預言者エリヤが生き返ったのだと言う者もあり、昔の偉大な預言者たちのような新しい預言者だ、と主張する者もありました。
16 しかしヘロデは、「いや、あれはわしが処刑したヨハネに違いない。ヨハネが死人の中から生き返ったのだ」と言いました。
17-18 実は、このヘロデが兵士たちに命じて、ヨハネを捕らえ、投獄したのです。ヨハネがヘロデに、兄嫁のヘロデヤを自分の妻にするのはよくないと批判したからです。 19 ヘロデヤは、その腹いせにヨハネを殺してやろうと思いましたが、ヘロデの許可なしには手出しができません。 20 ヘロデがヨハネを正しくきよい人物だと知って尊敬し、保護していたからです。ヘロデはヨハネと話をすると、決まって不安にかられましたが、それでも好んで聞いていました。
21 ところが、とうとうヘロデヤに絶好のチャンスが訪れました。それはヘロデの誕生日のことでした。王は、宮中の高官、高級将校、ガリラヤ地方の名士などを招待して、宴会を開きました。 22 その時、ヘロデヤの娘が居並ぶ客の前で舞をまい、一同をたいそう楽しませました。喜んだ王は、「ほしいものはないか。何なりと申せ」と言い、 23 その上、「国の半分をやってもよいぞ」と誓ったのです。
24 娘は出て行って、母親と相談しました。すると母親は、しめたとばかり、「バプテスマのヨハネの首をいただきたいと申し上げなさい」と入れ知恵しました。
25 娘は王の前に進み出ると、「今すぐ、バプテスマのヨハネの首を、盆に載せていただきとうございます」と言いました。
26 王は、困ったことになったと心を痛めましたが、誓ったことでもあり、また一同の手前もあって引っ込みがつきません。 27 やむなく護衛兵に、獄中のヨハネの首を切り、その首を持って来るように命じました。兵士は言われたとおり、 28 ヨハネの首を盆に載せて来て、ヘロデヤの娘に渡しました。すると、娘はさっそく、それを母親のところへ持って行きました。
29 ヨハネの弟子たちはそのことを聞くと、遺体を引き取り、墓に葬りました。
五つのパンと二匹の魚
30 さて、十二人の弟子は旅を終えてイエスのもとに帰り、自分たちのしてきたこと、また、行った先々で人々に教えたことなどを、くわしく報告しました。
31 イエスは弟子たちに言われました。「さあ、しばらく人ごみを避けて休みましょう。」イエスのもとには人の出入りが多く、食事をする暇もなかったからです。 32 彼らは舟に乗り、静かな場所へ出かけました。 33 ところが多くの群衆がそれと気づき、岸づたいに走って行って、一行が上陸するのを待ちかまえていました。 34 舟から上がられたイエスの前には、おびただしい数の人々が集まっていました。まるで、羊飼いのいない羊のような群衆を見て、イエスは深くあわれみ、いろいろなことを教え始められました。
35-36 午後も遅くなって、弟子たちがイエスのところに来ました。「先生。この人たちに、近くの村や農場へ行って、めいめいで食べ物を買うように言っていただけませんか。こんな寂しい所では、何もありません。それに時刻も遅いことですし……。」
37 しかし、イエスは言われました。「あなたがたが、この人たちに食べ物をあげるのです。」「ええっ! いったい何を食べさせたらいいんですか、こんな大ぜいの人たちに。そんなことをしたら破産してしまいます。」
38 「手持ちの食べ物がどのくらいあるか、見て来なさい。」こう言われて、弟子たちは調べに行きました。その結果、パンが五つと魚が二匹あるだけでした。 39-40 イエスは、群衆に分かれて座るようにお命じになりました。まもなく人々は、五十人から百人ずつの組に分かれ、それぞれ緑の草の上に座りました。
41 イエスは五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて感謝の祈りをささげると、パンをちぎって、人々に配るよう弟子たちに手渡されました。魚も同様になさいました。 42 群衆は、もうこれ以上は食べられないというほど十分に食べました。
43-44 その場で食事をしたのは、男だけでも五千人はいました。あとで残ったパン切れを拾い集めると、なんと十二のかごにいっぱいでした。
45 それからすぐ、イエスは弟子たちに、舟に戻り、先にベツサイダまで行くようにお命じになりました。あとで弟子たちと落ち合うつもりで、イエスだけその場に残り、群衆を解散させられたのです。
46 そのあと、イエスは山へ登られました。祈るためです。 47 夜になり、舟に乗った弟子たちは湖の真ん中までこぎ出していましたが、イエスはただ一人、陸地におられました。 48 ふと、ごらんになると、弟子たちは向かい風と波のためにこぎあぐね、危険にさらされています。夜明けの三時ごろ、イエスは水の上を歩いて彼らに近づき、そのままそばを通り過ぎようとされました。 49 ところが弟子たちは、湖上を歩くイエスを幽霊と見まちがい、恐怖のあまり大声をあげました。 50 みな、おびえきっています。イエスはすぐに、「安心しなさい。ほら、わたしです。こわがることはありません」と、声をおかけになりました。 51 イエスが舟に乗り込まれると、風はぴたりとやみました。弟子たちは訳がわからず、ただぼんやりと座っているだけでした。 52 前日の夕方、あれほどのパンの奇跡を目のあたりにしながら、弟子たちには、イエスがどんな方か、まだわかっていなかったのです。その心が堅く閉じていたからです。
53 一行は、湖の向こう岸のゲネサレに着き、舟をつなぎました。 54 彼らが舟から上がると、人々はすぐにイエスだと気づき、 55 その地方全体に、イエスがおいでになったことを告げ知らせたので、寝たままの病人が次々に、イエスのもとに運ばれて来ました。 56 そして、村でも町でも農場でも、人々は病人を広場に寝かせ、せめて着物のすそにでもさわらせてほしいと願うのです。さわった者はみな治りました。
マルコの福音書 7
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大切なのは心
7 ある日、ユダヤ人の宗教的指導者たちが数人、イエスを調べてやろうと、わざわざエルサレムから出向いて来ました。 2 そして、イエスの弟子の中に、ユダヤの食前のしきたりを守らない者がいるのを見つけました。 3 そのしきたりというのは、ユダヤ人の中でも、特にパリサイ人たちがやかましく守っているものでした。古くからの言い伝えで、食事の前には必ず、腕からひじにかけて水を注ぐ決まりだったのです。 4 また市場から帰って来た時には、食べ物に触れる前に必ず体に水を注ぎかける決まりもありました。そのほかにも、水差し、なべ、皿を洗うことなど、何世紀ものあいだ守り続けてきた、こまごまとしたおきてやしきたりがあったのです。 5 そこで、彼らはイエスに、「どうしてあなたの弟子は、昔からの言い伝えを守らないのか。手も洗わないで食事をするとはけしからん」と言って、詰め寄りました。
6 イエスはお答えになりました。「そう言うあなたがたこそ偽善者です。預言者イザヤが言ったのは、あなたがたのことだったのです。
『彼らは口先ではわたしを敬うが、
心はわたしから遠く離れている。
7 彼らがわたしを拝んでも、むだなことだ。
神の命令の代わりに、
人間の規則を教えているのだから。』(イザヤ29・13)
なんと的を射たことばでしょう。
8 あなたがたは神のほんとうの戒めをないがしろにして、自分たちの言い伝えとすり替えているのです。 9 それを守るために、よくも神の戒めを捨て、踏みにじったものです。
10 モーセは、『あなたの父と母とを敬え』(出エジプト20・12)という戒めを神から託され、あなたがたに伝えました。また、『父や母をののしる者は死刑に処せられる』(出エジプト21・17)とも言いました。 11-12 ところがどうです。あなたがたときたら、父や母に、『すみませんが、助けることはできません。差し上げるはずのものは神にささげてしまいました』と言いさえすれば、助けを求める両親をおろそかにしてもかまわない、と教えているのです。 13 あなたがたは自分たちのつくった言い伝えを守るために、神のことばを空文化しているのです。そして、ほかにも同じようなことをたくさんしているのです。」
14 イエスは、もう一度群衆を呼び寄せて、「さあ、よく聞いて、その意味を考えなさい。 15-16 人は決して外から入る食べ物によって汚されるのではありません。むしろ、内から出て来ることばや思いによって汚されるのです」と言われました。
17 それから群衆と別れ、家に入られました。すると弟子たちが、「さっきのおことばは、どういう意味でしょうか」と尋ねました。
18 イエスはお答えになりました。「あなたがたまでわからないのですか。食べ物は人を汚さないということが、そんなに不思議なのですか。 19 いいですか。食べ物は人の心に入るわけではないでしょう。腹に入って、外へ出るだけではありませんか。」イエスは、あらゆる食べ物がきよいものであることを示し、 20 さらに続けて言われました。「人の内側から出るもの、それが問題です。 21 肉欲、盗み、殺人、姦淫、 22 貪欲、邪悪、あざむき、好色、ねたみ、悪口、高慢、あらゆる愚かさ、それらのものはみな、人の心の中からあふれ出ます。 23 この内側から出て来るものが人を汚し、神にふさわしくない者とするのです。」
広まるイエスのうわさ
24 イエスはガリラヤを去り、ツロとシドンの地方に行かれました。人目を避けて旅していましたが、いつものように、イエス来訪のニュースは、あっという間に広がってしまいました。
25 自分の小さな娘が悪霊につかれて困っていた母親が、うわさを聞いて駆けつけました。彼女はイエスの前にひれ伏すと、 26 娘から悪霊を追い出してくださいと懇願しました。実は、この女はスロ・フェニキヤ人で、ユダヤ人から見れば、軽蔑すべき「外国人」でした。
27 イエスは女に言われました。「わたしはまず、同胞のユダヤ人を助けなければなりません。子どもたちのパンを取り上げて、小犬に与えるのはよくないことです。」
28 「おっしゃるとおりでございます。でも先生、食卓の下の小犬だって、子どもたちのパンくずは食べるではありませんか。」
29 この答えにイエスは感心しました。「実に見上げたものです。さあ、安心して家にお帰りなさい。悪霊はもう、娘さんから出て行きました。」
30 女が家に戻ってみると、娘は静かに床に横たわっており、すでに悪霊は出たあとでした。
31 イエスはツロをあとにし、シドンからデカポリス地方を通って、ガリラヤ湖畔にお帰りになりました。 32 その時、人々が、耳も聞こえず、口もきけない男をイエスのところに連れて来て、「どうぞ、手を置いて治してやってください」と頼みました。
33 イエスはその男を群衆の中から連れ出し、自分の指を彼の両耳に差し入れ、それからつばをして、彼の舌にさわられました。 34 そして、天を見上げてふっと息をつき、「開け」とお命じになりました。 35 するとどうでしょう。男の耳は聞こえるようになり、舌のもつれもとけて、はっきり話せるようになったではありませんか。
36 イエスは群衆に、うわさを広めないようにと堅く口止めされましたが、そう言われれば言われるほど、人々はかえって言い広めました。 37 イエスのなさったことにあきれ驚いたからです。人々は、「ああ、なんてすばらしいことをなさるお方だろう。耳が聞こえず、口もきけない人さえお治しになった!」と言い合いました。
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